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東京都23区内のタヌキの生息分布(2007年7月版)

※無断転載禁止

2007年7月
(2007年11月掲載)

NPO法人都市動物研究会
宮本 拓海(本稿執筆担当)
佐々木 洋
木村 雅美


●概要

・NPO法人都市動物研究会は、聞き取りや情報提供などによって東京都23区内のタヌキの情報を収集した。
・情報を整理した結果、2001年から2007年6月までの期間に約200ヶ所の目撃地点を得た。
・この目撃地点を2kmメッシュ地図にプロットし、分布地図を作成した。

●収集された情報

NPO法人都市動物研究会(以下、都市動物研究会)では2006年から本格的に東京都23区内のタヌキの情報収集を始めた。また、それ以前からも佐々木、宮本らによって情報は蓄積されてきた。
今回、その収集された情報を統一されたフォーマットで整理し、データベース化作業を行った。

収集された情報は全181件になった。

これらの情報源の分類は以下の通り。

NPO
47件
佐々木
44件
宮本メール
36件
宮本
4件
ホームページ
39件
メディア
11件

NPO=都市動物研究会のアンケート調査で得られた情報。または都市動物研究会あてにFAXなどで送られてきた情報。
佐々木=佐々木が直接確認した情報。または聞き取りなどで収集した情報。
宮本メール=宮本がホームページ(ikimonotuusin.com、現tokyotanuki.jp)で情報収集を呼びかけ、メールで寄せられた情報。
宮本=宮本が直接確認した情報。または聞き取りなどで収集した情報。
ホームページ=インターネット上のホームページ(ブログを含む)に掲載されていた情報。収集は宮本が担当。
メディア=新聞、テレビで紹介された情報。

なお、上記181件に東京都23区外の情報は含まれていない。東京都23区外の情報の件数は以下の通りである。

東京都多摩地区(23区以外の全域)
12件
神奈川県
1件
埼玉県
1件
千葉県
0件

●目撃地点の整理

得られた情報は、そのままでは地図作成には使用できない。その理由は、
 1) 古すぎる情報の扱い
 2) 1つの情報に複数の目撃地点が含まれる場合がある
 3) 同じ地点での複数の情報がある(=同じ個体・ファミリーを繰り返しカウントすることになる)
といったためである。

今回の地図作成の目的は生息分布を示すことであり、単純に情報数を示すことではない。そのため、情報を整理し、「目撃地点」としてまとめることにした。
 1) 2001年〜2007年6月の情報を対象にする。
 2) 1つの情報に複数の目撃地点が含まれる場合は、目撃地点ごとに整理する。
 3) 明らかに同じ地点、同じファミリーを指している複数の情報は1つにまとめる。

また、東京都23区外の情報は対象外にしている。

この整理の結果、目撃地点は全191ヶ所になった。
これを区ごとに表にする。

千代田区 3
中央区 0
港区 3
新宿区 7
文京区 13
台東区 2
墨田区 0
江東区 1
品川区 1
目黒区 1
大田区 3
世田谷区 35
渋谷区 5
中野区 5
杉並区 21
豊島区 8
北区 7
荒川区 1
板橋区 26
練馬区 32
足立区 6
葛飾区 8
江戸川区 3
 

●メッシュ地図

生息分布を可視化するために、目撃地点をメッシュ地図にプロットする作業を行った。

・座標系は世界測地系を採用する。
・メッシュは約2km×約2kmに相当する。
 正確には、東西方向に90秒、南北方向に60秒で近似している。基準点は、区切りのいい北緯35度45分、東経139度45分(荒川区と北区の境界付近)。

完成したメッシュ図は次の通り。

※この画像への直接リンクはやめてください。リンクをする場合はこのページにリンクするようにしてください。

●注意点

・これが東京都23区内にすむタヌキのすべての情報ではない。私たちが収集できなかった情報がまだ多く残されているのは明らかである。

・位置の誤差について
情報の大半は、「丁目」レベル以上の精度で目撃場所を特定できている。「丁目」レベルでの位置の誤差はだいたい200〜300m程度、最大でも500mである。中にはピンポイントで場所を特定できているものも少なくない。
一方、「丁目」レベルの精度に満たない情報もある(36地点)。この場合、最大の誤差は約1.5kmになる。

・本稿では目撃情報、メッシュ地図についての解釈は行わない。これは別稿であらためて分析する。

●謝辞

タヌキ情報の収集には多数の方々からのご協力をいただいた。東京都23区は想像以上に広大な面積で、個人や都市動物研究会だけでは今回のようなデータベースは完成できなかった。情報を寄せられた皆様には最大の感謝をしなければならない。
タヌキ情報を個人で最も多く持っているのは佐々木洋氏である。今回のデータベースでも最重要情報源であった。
データベース作成にあたっては都市動物研究会の木村雅美さんが多くの実作業を担当してくれた。
また、聞き取り調査などの活動してくれた都市動物研究会メンバーにも感謝を表したい。

そして最後に、暮らしにくい大都会にしぶとく生き残ってきたタヌキたちを讃えたい。

※タヌキの目撃情報の収集は引き続き行っています。ご協力お願いします。


 


東京都23区内のタヌキの生息分布の概要

※無断転載禁止

2007年7月
(2007年11月掲載)

NPO法人都市動物研究会
宮本 拓海(本稿執筆担当)


前記「東京都23区内のタヌキの生息分布(2007年7月版)」について分析の概要を記す。

●注意点

分布情報の分析の詳細は別の機会に行う。今回は概要のみ述べる

●分布の分析

・中央区、墨田区では今回は生息情報は得られなかった。
墨田区は生息の可能性がゼロではないと思われる。ご存知の方は生息情報をしらせてほしい。

・分布は明らかに西側にかたよっている。

・多摩川、荒川といった河川敷が広がる大河川沿いも多い。

・一般には大都会と見なされるJR山手線の内側にも確実に生息している

・これだけの数がいるということは、「ペットが逃げ出したもの」ではなく、「野生で生活している」ことを明らかに示している。
また、広範囲に広がっていることから、「山の方(多摩の方)から進出してきた」のではなく、「ずっと昔からそこで暮らしていた」と解釈する方が自然である。

・生息地には共通の特徴がある。緑地、鉄道線路、寺社、学校には生息例(目撃例)が多い。

・目撃地点が近接しているものは、血縁的なつながりがあることが推測できる。

・交通量の多い道路は、タヌキの移動のバリアー(障害)になっていると推測できる。ただし、絶対的なバリアーではなく、容易に突破できる箇所もある。

・今回の生息分布からはタヌキの生息数の増減は判断できない。過去の比較できるデータがないから、また、すべての生息情報が得られているわけではないからである。

・生息が確実と考えられる場所でも目撃情報が得られていない例がある。今後の情報収集では要注意の場所である。


 


※タヌキの分布の詳細な分析は書籍「タヌキたちのびっくり東京生活」に掲載しています。

次回の生息分布図は、2008年末までの情報をまとめ、2009年に公開する予定です。


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