基本データ
和名:タヌキ(狸)
学名:Nyctereutes procyonoides
英名:Raccoon dog
分類:哺乳綱 食肉目(ネコ目) イヌ科 タヌキ属
頭胴長:50〜80cm
尾長:12.5〜25cm
体高:27〜37.5cm
体重:3.6〜6kg(秋には6〜10kkg)
(身体データは「世界の動物 分類と飼育2 食肉目」(東京動物園協会)による。)
生息分布:
東アジア(日本、朝鮮半島、中国、ロシア・ウスリー地方など)。
毛皮目的でソビエト連邦(当時)に移入されたものが野生化し、現在はヨーロッパに広く分布している。
(亜種ごとの生息分布は「分類」のページに掲載。)
モルフォロジー(形態)
・体格
他の食肉目同様、4足歩行する。
大きさは小型のイエイヌ(小型犬)やイエネコに近い。
イヌ科であるため骨格的にはイエイヌ、タイリクオオカミ、アカギツネなどと基本的に同じである。顔も吻(鼻)が長い「イヌ顔」である。
脚はイヌ科の中では短めで、ネコと間違われることがある。冬毛の時は毛が長いので、より短足に見える。後脚のみで立ち上がることはイエイヌ同様に難しい。
尾は短めで、地面に届かない。
・体毛
冬期は毛足が長い冬毛になり、また、体重も増加するため、太ったような外見になる。夏毛は短いためイヌのように見える。特に幼獣は毛が伸びきっていないためにイヌそっくりに見える。
体色は全体に褐色系。目のまわり、四肢は黒い。前脚は肩の高い位置まで黒い。肩の黒い模様の前後の体毛は淡色であり、肩の黒い模様を強調する。
目の周りの黒い模様は左右つながっていない。マンガやイラストなどでは目の周りの黒い模様が左右つながっていることがあるが、これは誤り。ただし、吻(鼻)の上面で左右の黒い模様がつながることはある。この場合でも左右の目の最短距離の部分が黒くなることはない。
体色の模様や濃淡は個体によってさまざまな違いがあるため、統一的な説明が難しい。胴体部の模様は冬毛と夏毛で印象が違ってくるため、個体識別には利用しにくい。顔の毛の長さは年間を通じてほとんど変わらないため、目の周りの黒い模様は個体識別に利用できる(ただし同一家族間では区別しにくい場合が多い)。
背中の背骨に沿って黒い模様がある個体もいる。
尾には模様は無い。先端部がやや黒くなる程度である(尾にシマ模様(リング模様)があるのはアライグマ)。
・耳
耳は丸みのある三角形で、正面から見ると黒く縁取られている(クマのような丸耳ではない)。
・指
足指は前が5本、後が4本。ただし、前足の1本は地面に届かない位置にあるので、足跡は前後ともに4本指になる。ツメは引っ込めることはできないので、足跡には必ず爪跡もある。これら足指の特徴はイエイヌと同じである。
・眼
眼球は黒目の面積がほとんどで、白目の部分は眼球を左右に動かした時ぐらいしか確認できない(イエイヌとほぼ同じ)。黒目の中央部分は黒に近い褐色で、周辺部分は濃い褐色。
目の周りの黒い模様のために眼球の位置は遠くからはわかりにくい。
正面から白色光を当てた時の目の反射光はオレンジ色(幼獣は白っぽいオレンジ色)。目の反射光は正面以外の方向では別の色に見えることがあるので注意。
・歯
歯式は3/3・1/1・4/4・2〜3/3=42〜44。
イエイヌ( 3/3・1/1・4/4・2/3=42)とほぼ同じなので頭骨だけだと区別できないように思えるが、イヌは大型犬から小型犬まで大きさが多様で、品種によっては極端に吻(鼻)が短いなど「イヌらしさ」を失っている例もあり、慣れれば判別は難しくない。
【東京タヌキ】
形態について、東京タヌキが他の地域のホンドタヌキと特に異なる点はない。
※なぜモルフォロジーについて詳しく書いたのかというと、生物学ではモルフォロジーが軽視されていると思っているからです。モルフォロジーなんて写真資料があれば必要ない、という意見はごもっともですが、数枚の写真だけではモルフォロジーを完全に説明することはできません。モルフォロジーは言語化されることで確実に意味を伝達することができるのです。もちろん写真資料と組み合わせればより確実になります。
他の図鑑、事典でもモルフォロジーの記述が増えることが望ましいと思っています。
学名の意味
英語版Wikipediaによる。
Nyctereutes procyonoides
「nukt」=夜
「ereuten」=さまよう者、放浪者(wanderer)
「prokuon」=before-dog、原始的なイヌ、といった意味。新ラテン語では「アライグマ」を意味する。
「-oides」="-old"(接尾語)、古い
英名の意味
raccoon=アライグマ
dog=イヌ
つまり「アライグマイヌ」「アライグマのようなイヌ」の意味。
ヨーロッパではアライグマの方が先に知られたためにこのような名前になったと考えられる。
※これでは「アライグマ」なんだか「イヌ」なんだかわからない名前なので、「Tanuki」を国際的に通用させたい、と東京タヌキ探検隊!では考えています。