食性
タヌキは動物性のものも植物性のものも食べる雑食である。
「雑食」というと誤解されやすいが、「何でも食べる」という意味ではない。動物性のもの、植物性のもの両方を食べるという意味である。石ころやコンクリートを食べることはない。また、雑食でも種によって食べ物の好みには明らかに傾向がある。動物食に偏っていたり、植物食に偏ったりしているのは珍しくない。
食性はフンを分析して調べる方法が一般的。
以下では主に東京タヌキでの例を紹介している。食べるものは地域によっていくらかの違いがあるだろう。
動物性
昆虫をよく食べる。主に徘徊性昆虫(地面を歩き回る昆虫)。フンの分析では甲虫類が多く、その他にもハサミムシ類、セミの幼虫なども見つかる。昆虫ではないがムカデ類も食べる。ミミズも食べるのではないかと考えられる。
フンからは鳥の羽毛が出てくることもある。ただ、タヌキは生きている鳥を捕獲できるほど器用なハンターではないので、弱った鳥や死体を食べていると考えられる。フンの中の羽毛は非常に小さいので、それから鳥の種類を同定することは困難。
フンからはまれに小さな脊椎動物の骨が見つかる。カエルやネズミを食べているのかもしれない。
水場ではエビやカニも食べる。
フンの内容物から推測すると、タヌキは積極的に狩りをする動物ではない。あちこち歩き回り、簡単に得られることができるものをよく食べているようだ。
植物性
果実を好む。
カキノキ(柿)、イチョウ(銀杏)、ムクノキ、ビワなどが代表例。
ただし、タヌキは木登りが得意ではないため、自ら登って果実を食べることはほとんどない。地上に落下した果実を食べるしかない。
フンからは雑草の葉も出てくるが、意識して食べているのかどうかはわからない(昆虫を捕まえる時にたまたま口に入ったのかもしれない)。
人間由来物
タヌキは山奥だけでなく、里山や住宅街などにも生息している。その場合、多かれ少なかれ人間生活に由来するものを食べることがある。これを「人間由来物」という。人間由来物はさらに「自然物」と「人工物」に分けられる。
自然物:
生ゴミに含まれるもの、人間がエサとして与えたものである。
人工物:
主に工業製品である。
ビニール、輪ゴム、革製品などがある。主に生ゴミに由来するのではないかと考えられる。
ドッグフード・キャットフードも人間由来物であるが、自然物と人工物のどちらに分類すべきかは難しい。ただ、これらは消化が良くてフンからは証拠が出てこないのでどれほど食べているかを調べることはできない。
【東京タヌキ】
東京タヌキの食性ももちろん雑食だが、具体的に何を食べているか、人間由来物がどれほどあるかは現在調査中である。今のところ、人間由来物ばかりを大量に食べている傾向は見られない。ちゃんと自然環境中で食事をしているようである。
皇居のタヌキは、その生息環境からも容易に想像できるように人間由来物はほとんど食べていない。(「皇居のタヌキ関連情報」で紹介している論文「皇居におけるタヌキの食性とその季節変動」(酒向、川田、手塚、上杉、明仁、2008年)を参照のこと。)