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タヌキなどの目撃情報を常時収集しています。※無断転載禁止
執筆:宮本 拓海 (東京タヌキ探検隊!)
2014年1月
・宮本(東京タヌキ探検隊!)による東京都23区内でのタヌキ、ハクビシン、アライグマ他の目撃情報の集計を報告する。
・今回の集計期間は2011年〜2013年。タヌキは400件、ハクビシンは607件、アライグマは48件、アナグマは6件が含まれる。
・アライグマはいくつかの地域で繁殖・定住の兆候がある。23区全体でも数十頭が生息している可能性がある。
・アナグマは東京都23区にもごく少数が生息しているようだ。
・東京都23区以外の全国の目撃情報についても簡単に報告する。東京都23区以外の目撃情報数はまだ非常に少なく、分析できる規模ではない。
・これまでの全目撃情報の中から特殊な事例についても報告する。
今年もタヌキ、ハクビシン、アライグマの目撃情報の集計を報告する。今回は2011年〜2013年の目撃情報の集計結果を報告する。
文中に「DBN1234」のように記されている数字は、東京タヌキ探検隊!データベースで目撃情報に割り振られた通し番号である。この番号はデータベースに記録された順であり、実際の目撃年月日の順ではない。後の検証をやりやすくするためにできるだけこの報告書にも記載していく。
目撃情報の報告の前に、2013年の東京都23区でのタヌキ関係の事件を振り返る(全国の事件については後述)。
2013年3月18日夜、渋谷区恵比寿のバレエスタジオ(ビルの地下1階)にタヌキ1頭が侵入してきた。タヌキはスタジオに閉じこめられ、警察官に捕獲された(日経新聞、読売新聞、NHKなど、DBN2507)。現場付近はそれまでタヌキの目撃情報は無く、定住はしていないと考えられる。最も近い定住場所は国立科学博物館附属自然教育園(港区)であり、そこから移動してきた可能性が高い。
東京都23区でニュースになった事件はこの1件だけだった。
収集された目撃情報は、データベース上で記録されている。記録する際、複数の目撃情報を1件にまとめることなどがある。そのルールは次のようになっている。
1.原則として、1つの目撃情報を1件として扱う。
2.同じ目撃者が同じ場所で繰り返し目撃している場合は、1件として数える。例えばタヌキが住宅の庭に来る場合や、ネコのエサやり場に来る場合がこれにあたる。
3.毎年同じ場所で目撃が繰り返される場合は、年ごとに1件として扱う。例えば、毎年営巣が行われていることが確認されている場合は各年を1件として集計している。
4.同じ個体(または同じ家族)であると推測される場合でも、場所・日時・目撃者が異なっていれば目撃情報別に個別に扱う。
せっかくの目撃情報がデータベースに記録されない場合がある。位置情報・年があいまいな場合は原則として記録されない。位置情報が「丁目」すらわからない場合はまず記録されない。
伝聞情報(いわゆる「人から聞いた話」)も日時や場所があいまいなことが多く、多くは記録していない。
駆除業者や行政からの聞き取りは行っていない。
分布地図の仕様は次の通り。
・座標系は世界測地系を採用する。
・メッシュは約2km×約2kmに相当する。正確には、東西方向に90秒、南北方向に60秒で近似している。これは地域メッシュ(JIS X 0410)での2倍メッシュと同一のものである(辺の長さが基準地域メッシュ(第3次メッシュ)の2倍のメッシュ)。
目撃位置の詳細が不明であるため誤差のあるプロットもある。
タヌキでは誤差(誤差半径)の最大は500m。誤差100m以上は9件。平均誤差は約15m。
ハクビシンでは誤差の最大は600mで、誤差100m以上は8件。平均誤差は約12m。
アライグマでは誤差の最大は100mで、誤差100m以上は2件。平均誤差は約14m。
大半は「番地」よりも詳しい位置が判明しており、中には誤差0mの例も少なくない。「番地」レベルでの誤差は約50〜200mに相当し、これは予想されるタヌキの行動範囲内に収まる。そのため「番地」レベルの位置情報が把握できれば実用上は十分である。ハクビシン、アライグマの行動範囲は不明だがタヌキよりも極端に広いとは考えにくい。
2011年〜2013年の目撃情報は400件あった。2011年は139件、2012年は136件、2013年は125件である。以前の報告書と数字が異なるのは、2013年に入ってからも前年までの目撃情報が寄せられたためである。
情報源の分類は以下の通りである。
メール | 386 |
メディア | 7 |
宮本 | 3 |
ホームページ | 1 |
その他 | 3 |
・メール=宮本がホームページ(東京タヌキ探検隊!)で情報収集を呼びかけ、メールで寄せられた情報。
・メディア=新聞、テレビなどで紹介された情報(ホームページに掲載された情報も含む)。
・宮本=宮本が直接確認した情報。または聞き取りなどで収集した情報。
・ホームページ=インターネット上のホームページ(ブログを含む)に掲載されていた情報。
・その他=電話2件、手紙1件。
このようにほとんどはメールによる情報である。Googleの「ニュース検索」は全国の新聞、テレビメディアを一通り網羅しているので便利だが、東京都23区に限るとタヌキ等のニュースはほとんどなく、あまり役に立っていない。
各区毎の目撃件数を多い順に並べると次のようになる。
杉並区 | 137 |
世田谷区 | 57 |
新宿区 | 44 |
渋谷区 | 27 |
中野区 | 22 |
千代田区 | 16 |
板橋区 | 16 |
文京区 | 13 |
足立区 | 12 |
豊島区 | 11 |
練馬区 | 10 |
北区 | 9 |
港区 | 7 |
大田区 | 7 |
江戸川区 | 4 |
目黒区 | 3 |
中央区 | 1 |
台東区 | 1 |
江東区 | 1 |
品川区 | 1 |
葛飾区 | 1 |
墨田区 | 0 |
荒川区 | 0 |
計 | 400 |
杉並区が飛び抜けて多い理由は不明である。宮本は杉並区在住であるが、特別な働きかけをしているわけではない。
多数の生息が予想される練馬区と板橋区で目撃情報数が少ない「練馬区のパラドックス」はまだ続いている[文献1]。
面積当たりの目撃件数を多い順に並べると次のようになる。
区 | 件数 | 面積 | 件数/面積 |
杉並区 | 137 |
34.02 |
4.03 |
新宿区 | 44 |
18.23 |
2.41 |
渋谷区 | 27 |
15.11 |
1.79 |
中野区 | 22 |
15.59 |
1.41 |
千代田区 | 16 |
11.64 |
1.37 |
文京区 | 13 |
11.31 |
1.15 |
世田谷区 | 57 |
58.08 |
0.98 |
豊島区 | 11 |
13.01 |
0.85 |
板橋区 | 16 |
32.17 |
0.50 |
北区 | 9 |
20.59 |
0.44 |
港区 | 7 |
20.34 |
0.34 |
足立区 | 12 |
53.20 |
0.23 |
練馬区 | 10 |
48.16 |
0.21 |
目黒区 | 3 |
14.70 |
0.20 |
大田区 | 7 |
60.42 |
0.12 |
台東区 | 1 |
10.08 |
0.10 |
中央区 | 1 |
10.18 |
0.10 |
江戸川区 | 4 |
49.86 |
0.08 |
品川区 | 1 |
22.72 |
0.04 |
葛飾区 | 1 |
34.84 |
0.03 |
江東区 | 1 |
39.99 |
0.03 |
墨田区 | 0 |
13.75 |
0.00 |
荒川区 | 0 |
10.20 |
0.00 |
計 | 400 |
618.19 |
0.65 |
面積はkm2。東京都ホームページによる。
順位に変動はあるが、全体の傾向はやはり例年と同じである。おおざっぱには上位(1.0以上)、中位(0.5以上1.0未満)、下位(0.5未満)に区分できる。
上位と下位に2極分化しているのが特徴であり、「タヌキがいる地域」と「タヌキがほとんどいない地域」がはっきりと分かれていると言える。
メッシュ地図を下に掲載した。
これまで通り、北西部に偏った分布が確認できる。1メッシュ当たり目撃件数の最大は39件である。杉並区東部で特に目撃が集中している。この地域は「環七通り〜環八通り間の善福寺側・神田川流域」および「中野区南台、杉並区方南、渋谷区笹塚」に相当する。
それぞれの目撃情報には興味深いものも含まれる。今回集計された情報を対象に紹介する。
死亡したタヌキの目撃例は10件あった。自動車にひかれたと思われる例は7件だった(DBN1338、1523、1755、2152、2335、2713、2751)。実際には交通事故死する例は少なくないと考えられる。脱毛症状を伴う例は1件だった(DBN2877)。
タヌキのフンの例は5件あった(DBN1314、1739、1793、2391、2456)。
何らかの脱毛症状が見られた例は41件あった。ただし2件は同じ場所であり同一個体群であることは確実(DBN1266、1274)、また別の2件も目撃日と場所が近接しており同じ個体である可能性が高い(DBN1873、1874)。
全目撃数に対する割合は約10%である。毎年同程度の割合なので、流行とは関係なく一定割合で発症しているようだ。地域もばらばらである。
このうち昼間の目撃は28件あった。夜間は毛並みの確認までできないということもあるのだろう。また疥癬症だと裸同然の姿になるので、冬は暖かい昼間でないと活動できないのかもしれない。
目撃月の最多は12月の10件、次いで1月、3月の6件、2月、5月、11月の4件である。他の月は1〜3件であった。冬の目撃が多い。前述のように冬は昼間に活動する可能性が高いために発見率が高いのかもしれない。そのため本当に冬に発症率が高いかどうかはわからない。
タヌキがイヌに遭遇する例は18件あった。イヌが興奮する例が5件、何も反応しない例が7件、イヌがタヌキに気づかない例が2件である。タヌキの方も、ある程度の距離があればイヌと人間の様子をうかがう例もある。イヌがリードでつながれていることを見切っている節もある。
室内のイヌが、見えないはずの屋外のタヌキに反応する例もある(DBN1585、1739)。
タヌキとネコが遭遇する例は35件あった。これにはネコ用に置いたエサを食べに来た例(ネコには直接遭遇していない場合もある)が含まれる。ネコのエサを食べた例は13件。この他にもエサを食べずに去った例、ネコのエサやり場に姿を現した例が複数ある。
宮本が直接観察した例では、タヌキの方がネコよりも強い。しかしネコがタヌキを威嚇したり、ちょっかいを出すこともあった。過去の目撃情報でも、タヌキが強かったり、ネコがタヌキを追いかけたりといった例がある。全体としてはタヌキの方が優勢のようだ。
野良猫へのエサやり場にタヌキが現れる例は各地で発生していると推測されるが、ネコ担当者はいろいろと肩身の狭い思いをしているせいか、あまり外部に助けを求めないようにも見える。ネコとタヌキのトラブルについては、筆者が個別に対応しているので、ぜひメールで知らせてほしい。
河川落下は2件あった(DBN1539=神田川、2763=石神井川)。
これまでの事例から推測すると、タヌキは誤って落下したのではなく、道路側溝などからつながる排水管を通って河床へ行き来している可能性が高い。
なお、タヌキ河川落下事件ではたいていの人が警察や消防に通報するが、これは正しくない。野生動物の行政の窓口は都道府県であり(東京都の場合は東京都環境局)、まずこちらに通報すべきである。
グラフを下に掲載した。月日が不明な目撃例は集計していない。はっきりした傾向がわかりにくいが、10月が最多、5月が最小となるのはいつも通りである。秋に目撃が多いのは、タヌキが巣から離れて遠くへ移動していくためあちこちで目撃される可能性が高くなるからだろう。5月は出産直後の時期で、巣からあまり離れられないため目撃が少ないと推測される。
グラフを下に掲載した。時刻が不明な目撃例は集計していない。18時から24時の目撃が多いのはタヌキが夜行性であることの反映である。0時以降の目撃が少ないのは人間の活動があまりなく目撃機会が少ないためである(つまり「終電後」の時間なのである)。
(目撃時刻は「20時ごろ」といったあいまいな場合も「20時」として集計した。そのためグラフにはいくらかの誤差が含まれる。これはハクビシン、アライグマの場合も同じ。)
参考までに東京の日出時刻は4時25分ごろ〜6時51分ごろ、日没時刻は16時28分ごろ〜19時01分ごろである。
有効件数は386件。目撃頭数が1頭のみの例は293件で、全体の約76%にあたる。2頭は57件、3頭は20件、4頭は8件、5頭以上は8件である。最大目撃頭数は9頭(内、幼獣が7頭)(DBN1535)。
1頭の目撃が多いが、つがいでもいつも寄り添って行動しているわけではなく、少し離れた場所にいることもある。目撃が1頭であっても近くに他の個体がいた可能性は否定できない。
ここでの目撃場所とは、最初に目撃された位置のことである。例えば道路と民家敷地を行き来したとしても、最初の目撃場所が道路ならば「道路」と分類している。
道路は192件、民家は126件、企業は31件、寺・神社は14件、公園は12件、学校(教育施設)は6件である。ただし、「民家」には「アパートやマンションの敷地、駐車場」が含まれる。「企業」にも「駐車場(店舗用、コインパーキング)」が含まれる。
上記と重複するが、「線路・踏切」は15件ある(線路・踏切への出入りを含む)。この内7件はある特定の駅での目撃情報である(DBN1556、1690、1778、2051、2086、2090、2100)。線路敷地内にタヌキがすみついていたようだが、2013年は目撃情報はなかった。
塀の上で目撃された例は8件ある。
「家屋侵入」とは、建物の内部に入り込むことである(民家だけでなくあらゆる建築物が対象)。
家屋侵入は16件あった。開けた入り口からの侵入(床下ではない)(DBN1543)、ビルの地下1階で保護された例(おそらくドライエリアに落下したと思われる、DBN1905)、上で紹介したビル地下1階のバレエスタジオに侵入した例(DBN2507)、集合住宅の玄関ホールにいた例(DBN2820)がある。床下への侵入は7件、出産・子育てをした例は9件である。
タヌキが出産・子育てをしたという情報は28件あった。これは「同時に3頭以上の目撃」というだけでなく、明らかに親子の体格差があること、巣の場所がおおよそ絞り込めることも条件としている。
出産直後に幼獣を保護した例が1件(DBN1437、5月中旬)、おそらく出産直後に人間が存在に気付いた例が1件ある(DBN1448、4月下旬)。その他の目撃例(幼獣の成長の程度からの推測)
出産・子育ての場所は建物の床下が多い。建物の間の狭い空間を利用した例もある。雑木林や側溝の中など目撃されにくい場所で出産・子育てをする例もあると推測される。
2011年〜2013年の目撃情報は607件あった。2011年は240件、2012年は222件、2013年は145件である。
情報源の分類は以下の通りである。
メール | 602 |
宮本 | 2 |
メディア | 1 |
その他 | 2 |
その他=手紙2件。
各区毎の目撃件数を多い順に並べると次のようになる。
世田谷区 | 83 |
杉並区 | 59 |
大田区 | 50 |
新宿区 | 49 |
練馬区 | 39 |
中野区 | 34 |
豊島区 | 34 |
渋谷区 | 32 |
品川区 | 28 |
文京区 | 26 |
目黒区 | 26 |
江戸川区 | 26 |
板橋区 | 22 |
港区 | 20 |
足立区 | 17 |
葛飾区 | 13 |
北区 | 11 |
千代田区 | 10 |
江東区 | 9 |
中央区 | 7 |
台東区 | 6 |
墨田区 | 5 |
荒川区 | 1 |
計 | 607 |
ハクビシンは23区すべてで目撃されている。
面積当たりの目撃件数を多い順に並べると次のようになる。
区 | 件数 | 面積 | 件数/面積 |
新宿区 | 49 |
18.23 |
2.69 |
豊島区 | 34 |
13.01 |
2.61 |
文京区 | 26 |
11.31 |
2.30 |
中野区 | 34 |
15.59 |
2.18 |
渋谷区 | 32 |
15.11 |
2.12 |
目黒区 | 26 |
14.70 |
1.77 |
杉並区 | 59 |
34.02 |
1.73 |
世田谷区 | 83 |
58.08 |
1.43 |
品川区 | 28 |
22.72 |
1.23 |
港区 | 20 |
20.34 |
0.98 |
千代田区 | 10 |
11.64 |
0.86 |
大田区 | 50 |
60.42 |
0.83 |
練馬区 | 39 |
48.16 |
0.81 |
中央区 | 7 |
10.18 |
0.69 |
板橋区 | 22 |
32.17 |
0.68 |
台東区 | 6 |
10.08 |
0.60 |
北区 | 11 |
20.59 |
0.53 |
江戸川区 | 26 |
49.86 |
0.52 |
葛飾区 | 13 |
34.84 |
0.37 |
墨田区 | 5 |
13.75 |
0.36 |
足立区 | 17 |
53.20 |
0.32 |
江東区 | 9 |
39.99 |
0.23 |
荒川区 | 1 |
10.20 |
0.10 |
計 | 607 |
618.19 |
0.98 |
面積はkm2。東京都ホームページによる。
タヌキと比べると、薄く広く分布していることがわかる。上位4区は隣接しており、この一帯に集中しているらしいことは次に示す目撃分布図からも読み取れる。ただし、これは人口密度が高いため発見率が高いからとも考えられる[文献2]。
タヌキと同様に区分すると、上位(1.0以上)、中位(0.5以上1.0未満)、下位(0.5未満)となる。タヌキは上位と下位がはっきりと分かれているが、ハクビシンでは中位も多く、これによっても薄く広く分布していることが確認できる。
メッシュ地図を下に掲載した。
1メッシュ当たり目撃件数の最大は17件である。タヌキほど突出している地域はない。
全体的にはタヌキと同じく、東に少なく、西に多く生息している。しかし、23区全体に広く分布していることがタヌキと異なる。タヌキの生息が少ない都心部、東部、海岸部でも目撃されている。
ハクビシンの胴体部分の体色は淡色型、暗色型、赤褐色型があることが知られている。淡色型は80件(59%)、暗色型は43件(32%)、赤褐色型は13件(10%)が記録されている。夜間の目撃が多いため、体色がはっきりしない場合が多い。これらの3つの型の比率は地域によって異なる可能性がある。全国的な比較ができるようになれば興味深い結果が出てくるかもしれない。
目撃情報の中には奇妙な例もあった。ハクビシンの特徴は顔の中心を通る白い模様だが、「白線が無い(薄い)」という例が5件、「白線が2本」という例が1件あった。ゴミや汚れなどのせいでそのように見えた可能性もあるが、特殊な模様の例かもしれない。
死亡例は7件あった。すべて自動車にひかれたものと思われる。
2件は4車線以上の大通りであった(DBN1600、2700)。ハクビシンは道路幅に関係なく横断しようとしているようだ。
フン・尿の例は22件あった。屋根、ベランダ、屋上にフンがあったケースが15件、天井裏にフン・尿をしたケースが2件(DBN1987、2349)、自動車の屋根の上が1件(DBN1447)であった。内7件ではフンを回収し分析した(DBN1306、1447、1968、1976、2013、2219、2730)。フンの内容物はほとんどが植物種子である。植物種子以外の内容物が発見されたのはDBN2219のみである(甲虫類、おそらくコガネムシ類)。
何らかの脱毛症状が見られた例は1件あった(DBN2568)。この例では額の部分がはげていた。
脱毛症状の件数が少ないのは、ハクビシンは短毛であるため目立たないからかもしれない。また、夜間の遠くからの目撃では脱毛症状はわからないだろう。
イヌに遭遇する例は38件あった。イヌは吠えない、あるいは何も関心を示さないことが多い。吠える例は6件あった。イヌが電線上のハクビシンに気付く例もあった(DBN2118)。
ネコに遭遇する例は31件あった。これにはネコ用に置いたエサを食べに来た例(ネコには直接遭遇していない場合もある)が含まれる。ネコのエサを食べた例は6件。ネコがハクビシンに対して威嚇したり騒いだりした例は6件、ネコがハクビシンの後を追う例は4件、ハクビシンがネコを追う例は2件あった。ハクビシンとネコはいい勝負なのかもしれない。
河川落下の情報はない。ハクビシンの運動能力ならば、垂直壁の鉄ハシゴを登ることなど容易なはずである。よって、河床から脱出できなくなることはないだろう。
グラフを下に掲載した。月日が不明な目撃例は集計していない。夏に多く冬に少ないというパターンで、タヌキとは違う傾向を示している。タヌキと違い出産時期も読み取ることができない。
冬は目撃が少ないため、ハクビシンは寒冷期は活動が不活発になるのかもしれない。
グラフを下に掲載した。時刻が不明な目撃例は集計していない。20〜23時に目撃は多い。昼間の目撃は少なく、タヌキよりも夜行性が強い。
有効件数は580件。目撃頭数が1頭のみの例は498件で、全体の約86%にあたる。2頭は61件、3頭は15件、4頭は6件である。5頭以上の目撃例がないことから、出産頭数はタヌキよりも少ないことが統計的に推測される。
体格の違いから親子と思われる目撃例は22件あった。月別では1月=3件、5月=1件、6月=1件、7月=3件、8月=3件、9月=1件、10月=4件、11月=3件、12月=2件(不明1件)。時期がばらついているため、出産の時期が長いことが推測される(タヌキの出産時期が1ヶ月ほどの間に限定されるのとは対照的である)。10月〜12月に比較的目撃が多いため夏から秋にかけて出産することが多いのではないかとも推測できる。
道路は343件、民家は194件、企業は23件、公園は14件、学校(教育施設)は7件、寺・神社は3件である。ここでの目撃場所とは、最初に目撃された位置のことである。ただし、ハクビシンが電線上にいる場合は「道路」、民家の屋根の上ならば「民家」などと分類している。寺・神社が少ないが、目撃場所近くに寺・神社がある例は少なくなく、巣やねぐらにしている可能性は否定できない。
上記と重複するが、「線路・踏切」は6件ある(線路・踏切への出入りを含む)。
特殊な目撃場所については上とは別に集計している。塀・フェンスの上は134件、電線・電柱は132件、屋根・屋上・ベランダは84件、樹上は71件、欄干・手すりは4件、壁・窓・雨どいは16件である。これらの数字は重複がある。例えば、電線から屋根に移動した、という場合は「電線」「屋根」の両方でカウントしている。いずれにも該当しない例(つまり地上を歩くだけの例)は284件(全体の47%)ある。
※前回(2013年)の報告書で「壁・窓・雨どいは0件」と書いたが、これは記入ミスである。正しくは16件。
電線・電柱の目撃は全体の約22%になる。なぜ電線のハクビシンを発見できたかについて理由をたずねたところ、「2階など上層階のベランダや窓から発見」が22件、「たまたま見上げて」が15件、「視界に何か見えて」が15件、「鳴き声がして」が8件、「カラスが騒いでいた」が10件、「音がして」が1件、「イヌが気付いた」が1件、「坂道なので目線が自然に上を向いていた」が1件だった。
目撃例にはハクビシンが塀・フェンスを登る例もある。ネコの場合は一気に駆け上がるものだが、ハクビシンはほぼすべての例で一歩一歩よじ登っている。
ハクビシンが電線を走っていたという報告が複数ある(DBN1647、2379、2684、2881)。その速度は正確にはわからないが、「走る」と表現するほどの速さであったのだろう。
ハクビシンは有刺鉄線を歩いたり(DBN2875)、電柱のステー(電柱から地面に斜めに張られているワイヤー線)を登ったりしている(DBN2104)。かなり細い線でも歩けることがわかる。
ハクビシンの目撃例を分析すると、ハクビシンが森林の樹上生活に適応した動物であることが明らかである。ハクビシンは電線を歩き、電柱や樹木や塀を登る。住宅地では電線が縦横に張られており、これはハクビシンにとっては森林の樹上と似たような環境に見えることだろう。都市部でもハクビシンが生活できるのは電線のおかげと言えるかもしれない。
ただし、ハクビシンは「完全な樹上生活者」ではないことにも注意されたい。ハクビシンは地面上で目撃されることが最も多いのである。
家屋侵入は14件だった。ベランダに現れた例は含まない。屋根裏・天井裏が9件。いずれも民家であった。他にはオフィスビル1階に侵入した例が1件(DBN1573)、ビルの地下駐車場に侵入した例が1件(DBN1996)ある。
ハクビシンは屋根裏・天井裏に入り込むことがある動物である。もっと多くの侵入例があってもいいはずだが、目撃情報数が少なすぎるように思える。侵入された場合、駆除業者や行政への連絡が優先されるためかもしれない。
あるいは、空き家などを選んで侵入していることも考えられる。他にも寺の本堂や神社の本殿は屋根が高く、人間の使用頻度も少ないためハクビシンがすみついても気づかれていない可能性がある。
アライグマの集計結果は目撃情報が少ないため統計的に十分なものとは言えないことに注意してほしい。
2011年〜2013年の目撃情報は48件あった。2011年は21件、2012年は9件、2013年は18件である。
情報源の分類は以下の通りである。
メール | 48 |
宮本 | 0 |
メディア | 0 |
ホームページ | 0 |
各区毎の目撃件数を多い順に並べると次のようになる。目撃された区が増えている。
世田谷区 | 8 |
大田区 | 5 |
江戸川区 | 5 |
目黒区 | 4 |
杉並区 | 4 |
港区 | 3 |
新宿区 | 3 |
豊島区 | 3 |
品川区 | 2 |
練馬区 | 2 |
千代田区 | 1 |
中央区 | 1 |
文京区 | 1 |
江東区 | 1 |
渋谷区 | 1 |
北区 | 1 |
板橋区 | 1 |
足立区 | 1 |
葛飾区 | 1 |
台東区 | 0 |
墨田区 | 0 |
中野区 | 0 |
荒川区 | 0 |
計 | 48 |
メッシュ地図を下に掲載した。
1メッシュ当たり目撃件数の最大は3件である。
死亡例は0件だった。
フン・尿の例は0件だった。
何らかの脱毛症状が見られた例は0件だった。
イヌに遭遇する例は2件あった。
ネコに遭遇する例は2件あった。これにはネコ用に置いたエサを食べに来た例(ネコには直接遭遇していない場合もある)が含まれる。ネコのエサを食べた例は1件(DBN2429)。
河川落下は0件だった。
グラフを下に掲載した。月日が不明な目撃例は集計していない。
グラフを下に掲載した。時刻が不明な目撃例は集計していない。夜行性であることを示しているようだ。
有効件数は46件。目撃頭数が1頭のみの例は45件で、2頭は1件である。
道路は31件、民家は13件、公園は1件である。
特殊な目撃場所については上とは別に集計している。塀・フェンスの上は4件、電線・電柱は4件、屋根・屋上・ベランダは3件、樹上は1件、欄干・手すりは2件である。これらの数字は重複がある。
家屋侵入は0件だった。
出産・子育の情報は0件だった。どこを巣にしているのかの情報もまったくない。
アライグマが同時に複数頭目撃されたり、ある地域で集中して目撃される場合、繁殖が疑われる。これまで繁殖の可能性があることを指摘してきた地域は、世田谷区北部、田園調布周辺(大田区、世田谷区、目黒区)、文京区〜豊島区にかけての地域、赤坂御用地、江戸川区北部の5つである。これらの地域は引き続き警戒が必要だろう。
皇居では2009年にアライグマが目撃され、翌2010年に1頭が捕獲された。皇居に生息するアライグマはこの1頭のみと考えられていた。ところが2012年11月、千代田区霞ヶ関でアライグマ1頭が目撃された(DBN2356)。皇居の中あるいはその周辺地域に他の生息個体がまだ残っているようだ。2013年は皇居周辺での目撃情報は無い。
アライグマの目撃件数は少ないため、生息数を推定することは難しい。23区のタヌキの生息数を1000頭と仮定し[文献3]、タヌキとの目撃件数の比較から単純計算すると、23区内にアライグマは数十頭から100頭前後の規模で生息していると推測できる。
アライグマはいずれ生息数が増加していく可能性は否定できず、その動向を継続的に監視する必要がある。東京タヌキ探検隊!がアライグマを情報収集の対象にしているのはそのためである。
2011年〜2013年のアナグマの目撃情報は6件あった。2011年は0件、2012年は3件、2013年は3件である。写真が撮影されたのは1件のみである(DBN2418)。
場所は品川区、大田区、世田谷区、渋谷区、杉並区、江戸川区が各1件である。
アナグマについては下記の「考察1」もお読みいただきたい。
キツネの目撃情報はなかった。
昨年(2013年)の報告書[文献4]に記した通り、大田区でアナグマの写真が撮影された(DBN2418)。東京都23区内でのアナグマの確実な生息確認はデータベース内ではこれが初めてである。データベースにはこれを含めて以下の6件のアナグマ目撃情報が記録されている。写真があるのは1件だけであるので他の動物との誤認の可能性もあるが、最も可能性の高い動物はアナグマだった。
DBN | 目撃場所 | 目撃年など |
2061 | 品川区 | 2012年。 |
2361 | 世田谷区 | 2012年。自然環境、地形を考えると可能性が高い。 |
2418 | 大田区 | 2012年。写真あり。 |
2581 | 江戸川区 | 2013年。荒川堤防近く。 |
2602 | 渋谷区 | 2013年。 |
2725 | 杉並区 | 2013年。 |
この他にも「アナグマではないか」という目撃情報はいくつかあった。状況から他の動物ではないかと推定され、アナグマとしては記録していない。そのような「疑い例」は以下の6件である。
DBN | 目撃場所 | 目撃年など |
538 | 文京区 | 2009年。 |
551 | 千代田区 | 2009年。 |
1045 | 杉並区 | 2010年。塀の上。 |
2069 | 品川区 | 2011年。DBN2061との距離は約600m。 |
2190 | 世田谷区 | 2012年。 |
2674 | 杉並区 | 2013年。フェンスの上。 |
これらの中にもアナグマが含まれているのかもしれない。
疑い例を含めたとしても目撃情報数は非常に少なく、はっきりしたことは何もわからない状況である。現時点での目撃情報からは、東京都23区でのアナグマの推定生息数はアライグマより少なく、多くても数十頭程度と推測される。アナグマのそれぞれの個体群は遠く離れており、互いの交流はないとも予想される。「都会の緑地に孤立したアナグマ(の個体群)」というイメージである。もしその緑地が開発されればそこに生息するアナグマは絶滅することになるだろう。
この不明確な状況を解決するには、まずきちんとした生息調査が行われることが必要である。特に大田区(DBN2418)、世田谷区(DBN2361)、江戸川区(DBN2581)は生息場所の絞り込みが可能であり、調査を優先して行うべきである。本来ならば私自身が調査を行いたいところであるが、残念ながらリソース(時間、資金、人員)をまったく持ち合わせていないため実行不可能である。興味本位ではなく、しっかりとした態勢で生息調査を行う用意がある方には情報提供などの協力はするつもりでいる。
日本全国で見ればアナグマは絶滅のおそれはない動物である。しかし大都会の中のアナグマが消え去ってしまうことの是非については多くの人に考えていただきたいことである。
毎年の報告書ではタヌキとハクビシンそれぞれの運動能力についても書いているが、その意味についてあまり注目されていないようなので、今回は視点を変えて提示してみたい。下の表は、2011年〜2013年の目撃情報で高い場所にいた割合を比較したものである。
場所 | タヌキ(400件) | ハクビシン(607件) |
塀、フェンスの上 | 2.0% |
22% |
電線・電柱 | 0% |
22% |
屋根・屋上・ベランダ | 0% |
14% |
樹上 | 0% |
12% |
欄干・手すり | 0% |
0.7% |
壁・窓・雨どい | 0% |
2.6% |
ハクビシンは高い運動能力で電線を歩いたり、塀を登ったりして高所をうまく利用している。
一方でタヌキは高いところに登ることができないため、行動範囲は地面上にほぼ限られてしまう。塀の上で目撃された例がわずかにあるが、これは塀が低い場所を登ったか踏み台になるものを登ったと推測される。例えば斜面に接した塀では一方からは非常に低い高さになることがある。
タヌキが登ることができる(足がかりの無い)垂直壁の高さは、これまでの目撃情報などから1m程度が限界と考えられる。DBN2003では約1mのブロック塀を乗り越えた。塀ではないが80cmの段差を登った例がある(DBN556)。
タヌキとハクビシンの運動能力をまとめると次のようになる。
・タヌキ…
足がかりの無い垂直壁の場合、高さ約1mが登れる限界。
高さ1m以下、あるいは踏み台になるものがある場合は塀に登ることができる。
(塀の上に登ることができれば)塀の上を歩くことができる。
樹木、電柱に登ることはできない。
データベースには1件のみ木に登った例があるがどうやって登ったかの詳細は不明 (DBN1357、徳島県)。
鉄道線路のレールの上を歩くことができる。
電線を歩くことはできない(タヌキの足指では電線をつかむことができない)。
・ハクビシン…
塀、電柱、雨どい、壁、樹木などを登ることができる。登る時はジャンプすることもあるが、一歩一歩よじ登る例が多い。降りる場合も同様に一歩一歩よじ降りる例が多い。足がかりが無さそうなブロック塀でもよじ登れる。
電線を歩くことができる。移動速度は人間の歩行速度よりも速い場合がある。
有刺鉄線を歩くことができる(DBN2875)。
電柱のステーを登ることができる(DBN2104)。
タヌキとハクビシンの運動能力はこのようにはっきりと異なっているため、外見だけでなく「どこにいたか」の情報によっても判別することが可能である。
なお、これらの動物の運動能力はこれまで経験的に知られていたことであるが、詳細に記述された文献はほとんどないようだ。
東京都23区以外の目撃情報についても報告する。いずれも2013年のみの集計である。
2013年の最大のタヌキ事件は、鳥取県で捕獲された白いタヌキの事件である。
10月15日夜、鳥取県南部町東上の牛舎にしかけられたワナに白いタヌキ1頭が捕獲された。このタヌキは目、鼻が黒いことからアルビノではなく白変種と判定された。このタヌキは県知事の命令で引き取られ、鳥取市で開催中の「全国都市緑化とっとりフェア」で19日から展示された。だが、狭いケージに入れられ人目にさらされることになったため、NPO法人・地球生物会議ALIVEが展示中止を求めるなど各方面からの批判があった。県は引取先が見つかったとの理由で31日に展示を中止、11月15日にタヌキは岡山市の池田動物園に移送され、16日から一般公開された(毎日新聞、日本海新聞、朝日新聞など、DBN2782)。
タヌキが捕獲された場合、普通は放獣されるか殺処分されることになるが、体色が白かったために見世物になってしまったタヌキもある意味気の毒なことである。タヌキの白色個体は珍しいが、確率的には1000分の1から1万分の1ぐらいと推定される。タヌキは全国で数十万頭いると推測されるため、白色個体は数十頭はいる計算になる[文献5]。それを目撃することも捕獲することも実際には非常に難しいので確かに珍しい事例ではある。しかしだからといって野生動物を無理に見世物にするのは問題があると言わざるをえない。ちなみに2013年は7月に長野県諏訪郡富士見町で白色個体が目撃されている(朝日新聞、DBN2739)。また、正確な場所がわからなかったためデータベースには記録していないが、長野県上田市で白いタヌキが撮影されたことがフジテレビ「スーパーニュース」でも紹介されている(2013年2月6日放映)。
10月、山口県防府市の向島でタヌキの生息が確認されたことが報道された。向島は天然記念物「向島タヌキ生息地」として指定されているが、この17年間タヌキの生息が確認されていなかった。5月にタヌキが撮影され、ようやく生息が確認された(中国新聞、朝日新聞など、DBN2774)。
6月16日午前3時頃、山形市のJR山形駅〜羽前千歳駅間で、信号機にトラブルが発生した。復旧には昼間までかかり、山形新幹線などが運休した。北山形駅構内で感電したとみられるハクビシンの死体が見つかったため、架線を歩いていたハクビシンがショートさせたのが原因と見られている(読売新聞など、DBN2626)。山形新幹線は7月20日夜にも変電所に入り込んだヘビのためにショートし、在来線とともに26日まで運休した。JR東日本にとっては運が悪い事故が重なったが、変電所などに入り込んだハクビシンが感電死する事故は全国各地でまれに発生している。ハクビシンは運動能力が優れているため、侵入を防ぐことは非常に難しいだろう。
下に都道府県毎の目撃情報数の表を掲載した。これは2013年の目撃のみの集計である。目撃情報数が0件の地域は省略した。首都圏や大阪府は目撃者本人からのメールによるものが多いが、それ以外の地域の情報は新聞などのメディアに掲載されたものが多い。
目撃情報数が増えれば、東京都23区のようにより詳細な分析が可能になる。東京都23区以外からの目撃情報もぜひ知らせてほしい。
都道府県毎の目撃情報数(2013年)
タヌキ | ハクビシン | アライグマ | アナグマ | キツネ | マングース | |
北海道 | 1 |
|||||
山形県 | 1 |
|||||
福島県 | 1 |
1 |
||||
埼玉県 ※1 | 2 |
5 |
||||
さいたま市 | 3 |
1 |
1 |
|||
千葉県 | 4 |
6 |
2 |
|||
東京都23区 | 125 |
146 |
18 |
3 |
||
東京都多摩地区 | 18 |
9 |
2 |
3 |
1 |
|
神奈川県 ※2 | 2 |
1 |
1 |
|||
横浜市 | 8 |
|||||
川崎市 | 8 |
2 |
||||
石川県 | 1 |
|||||
長野県 | 2 |
1 |
1 |
1 |
||
静岡県 | 1 |
|||||
愛知県 | 1 |
1 |
1 |
|||
京都府 | 1 |
|||||
大阪府 ※3 | 1 |
|||||
大阪市 | 2 |
|||||
和歌山県 | 1 |
|||||
鳥取県 | 1 |
|||||
山口県 | 2 |
|||||
愛媛県 | 1 |
|||||
福岡県 | 2 |
|||||
熊本県 | 1 |
|||||
大分県 | 1 |
※ 「マングース」はジャワマングースのこと
※1 さいたま市を除く
※2 横浜市、川崎市を除く
※3 大阪市、堺市を除く。今回は堺市は0件。
2013年末現在、記録された全目撃情報数は2896件。動物別の内訳は
タヌキ 1450件(50%)
ハクビシン 1232件(43%)
アライグマ 151件(5.2%)
ニホンアナグマ 15件(0.52%)
キツネ 16件(0.55%)
チョウセンイタチ 7件(0.24%)
ニホンイタチ 3件(0.10%)
ジャワマングース 2件(0.07%)
不明 20件(0.69%)。
地域の内訳は
東京都
23区 2295件(79%)
多摩地区 186件(6.4%)
八王子市 25件(0.86%)
武蔵野市 18件(0.62%)
三鷹市 19件(0.66%)
府中市 13件(0.45%)
調布市 11件(0.38%)
町田市 17件(0.59%)
小金井市 13件(0.45%)
国分寺市 10件(0.35%)
多摩市 10件(0.35%)
神奈川県
横浜市 79件(2.7%)
川崎市 38件(1.3%)
千葉県
市川市 20件(0.69%)
松戸市 10件(0.35%)
埼玉県
さいたま市 15件(0.52%)
大阪府 38件(1.3%)
大阪市 11件(0.38%)
などである。
調査の性質上、人口が多いほど目撃数も多くなる傾向があることに注意してほしい。
全データのうち、写真や動画などがあるものは584件(20%)である。
目撃情報の内、特殊な事例については目撃年にかかわらず別に記録しておく。断りがなければ東京都23区内の事例である。
ここではアルビノも白変種も「白化個体」としてまとめて扱う。
東京都23区での白化個体の例はタヌキ1件のみ(DBN444)。
東京都23区を除く日本全国では、タヌキ4件、キツネ1件が記録されている。この内、DBN2653(タヌキ)は白い毛と濃褐色の毛がまだらになった体色だった。
尾が無いタヌキの目撃例が1件ある(DBN2544、2006年)。これと同じ個体は宮本も目撃している(書籍「タヌキたちのびっくり東京生活」p92に掲載。目撃は2006年。NPO法人・都市動物研究会の活動での目撃であるためデータベースには記録していない)。
尾が無いアライグマの目撃例が1件ある(DBN2606)。
ハクビシンが電線で感電、落下した時に尾が切れた例がある(DBN2781、後述)。
タヌキ、ハクビシン、アライグマは雨の中を行動することはまずない。
雨の中を行動した例はタヌキの1件のみである(DBN2796)。この事例では「傘が必要なほどの雨」の中、道路を歩いている姿が目撃されている。
2013年1月14日、関東地方に大雪が降った。その降雪の最中にハクビシンが目撃された(DBN2426)。
降水量が1mm以下の雨での目撃例は2件ある(DBN2578=ハクビシン、DBN2688=タヌキ)。
同時に複数頭が目撃された例で、頭数の最大はタヌキ11頭(成獣2頭、幼獣9頭、DBN251)、ハクビシン5頭(成獣2頭、幼獣3頭、DBN1026)、アライグマ3頭(DBN717)である。
タヌキは出産後から9月頃までは家族(つがいと子ども)がまとまって行動することが多く、同時に多数が目撃されるのはこの期間にほぼ限られる。
イヌのオスは後脚の一方を高く上げておしっこをする。これと同じ様子がタヌキでも1件目撃されている(DBN497)。東京都23区以外でも1件ある(DBN2745)。
タヌキは何らかのショックによって死んだように動かなくなることがあり、これは「タヌキ寝入り」と言われる。動物学では「擬死」と呼ばれる。タヌキ寝入りは東京タヌキ探検隊!のデータベースでは全国で1件も記録されていない。
タヌキがタヌキ寝入りできることは確実であるが、それが発生する確率は非常に低いようで、詳細に記録された例はほとんどないようだ[文献6]。その生理的な仕組みもはっきりしない。
タヌキ寝入りに最も近い例は2013年、静岡県での例(DBN2768)である。走行中の自動車に接触したらしいタヌキが道路上でぐったりしていた(外傷はなかったらしい)が、しばらくすると起き上がって去って行ったという。
なお、タヌキは関心があるものを(立ったまま)じっと見つめて動かないということがよくあるが、これはタヌキ寝入りとは言わない。
マンション7階の外廊下で目撃された事例がある(DBN2469)。外階段を登ってきたと推測される。目撃の直後、そこから地面に落下したらしいが、ハクビシンがどうなったのかは不明。死体は無かった。
ビル屋上(5階相当)にフンがあった事例がある(DBN2358)。
水平方向へのジャンプ力については2件の具体的な事例がある。DBN2013ではベランダ間をジャンプした(2階)。DBN2358ではビル間をジャンプした(4階相当)。いずれも水平距離は約80cm、上下差はほとんどない。
ハクビシンが電線から落下した例は2件ある(DBN2649、2781)。この内、DBN2781は感電したため落下したらしく(火花が散っているのが目撃されている)、その時に尾が切れた。
東京都23区を除く日本全国では感電死した例が3件ある。1件は変電所(DBN1373)、2件は鉄道施設(DBN2087、2626)であった。実際にはさらに多くの事例があると思われる。
ハクビシンが歩道橋を渡った例は3件ある(DBN1700、2222、2890)。
昼間、緑地公園の樹上で寝ているところを目撃された例がある(DBN1104、1684、2400)。ハクビシンは天井裏をねぐらにすることが知られているが、自然環境下でも普通にねぐらを得られるようだ。さまざまな場所をねぐらとして利用できることは、都市での分布の拡大に有利に働いているのだろう。
特殊事例というわけではないが、ハクビシンが食べた果実類をまとめてみた。東京都23区内の事例のみで、おおよそ季節順に並べた。
トキワサンザシ属、キンカン、桜桃(食用サクランボ)、ビワ、ウメ、モモ、ブドウ、イチジク、ズバイモモ(=ネクタリン)、カキノキ(干し柿を含む)、ヤマモモ
(野鳥のエサを食べた例)リンゴ、ミカン、夏ミカン、バナナ、モモ
(ハクビシンが食べたと疑われる例)イチョウ、イチゴ、ユズ、サツマイモ、オキザリス(カタバミ属)の球根
アライグマに池や水槽の魚を食べられる被害(未遂含む)は東京都23区で3件、それ以外で5件の例がある。被害に気付かれていない例は多数あると思われる。
以上の例はアライグマによる犯行である(推測含む)が、アライグマ以外にもゴイサギ、アオサギなどが魚を食べることがありうる。
目撃情報がこれだけあると、別の人がほぼ同時に同じ動物個体を目撃した例がいくつもありそうだが、実際には非常に少ない。「別の人が」「近接した時刻に」「近接した場所で」目撃する例を「近接目撃事例」と呼ぶことにしているが、これに該当するのは3組しかない。それぞれ
2008年、渋谷区、タヌキ(DBN364、365)
2011年、世田谷区、タヌキ(DBN1345、1346)
2012年、渋谷区、タヌキ(DBN2388、2390)
である。
もうひとつ、2011年大田区では奇妙な事例があった(DBN1803、1811)。別の人が、近接した時刻、近接した場所で動物を目撃しているのだが、それぞれアライグマ、ハクビシンだったのである(アライグマは写真あり)。ハクビシンが見誤りだった可能性はあるものの、かなり珍しい事例となった。
東京都23区でタヌキの目撃情報が無いのは墨田区のみ。目撃情報が10件以下の区は中央区1件、荒川区2件、品川区3件、江東区4件、葛飾区6件、目黒区7件、台東区8件である。
ハクビシンはすべての区で目撃されている。目撃情報が10件以下の区は荒川区3件、墨田区7件、台東区10件。
アライグマの目撃情報が無いのは台東区、墨田区、荒川区である。アライグマは生息数は少ないはずであるが、既に広く分散していることがわかる。
東京都23区にキツネが生息していないのはほぼ確実である。その理由は、タヌキよりも肉食傾向が強いため、都会では十分な食べ物が得られないためだろうと推測される。野ネズミを多数狩るには広大な緑地が必要となるだろう。
東京都23区に最も近いキツネの生息地としては、多摩川河川敷、荒川河川敷が挙げられる(いずれもその近接地域をも含む)。荒川では埼玉県戸田市で目撃例があり(2011年、DBN1761)[文献7]、これが東京都23区に最も近い目撃例である。多摩川では東京都多摩市で目撃例がある(2012年、DBN2368)。
千葉県側では、野田市の江戸川河川敷(2013年、DBN2644)、利根川河川敷(2013年、DBN2573)で目撃例がある。
いつの日かキツネが河川敷を下り東京都23区に到達することがあるかもしれない。ただし、上記の目撃例はいずれも東京都23区から見て対岸側である。
大河川から離れた場所では埼玉県所沢市(2012年、DBN2048)[文献8]、東京都国立市(2013年、DBN2629)[文献9]で目撃例がある。
報告書は毎年同じような内容ではあるが、最新の情報を提供するためにも定期的な報告は継続していく。
目撃情報の収集は今後も引き続き行っていく。「東京タヌキ探検隊!」を名乗っているが、タヌキだけではなく、ハクビシン、アライグマ、アナグマ、キツネなども平等に扱っている。また地域も日本全国を対象にしている。皆さまのご協力をお願いします。
宮本は現在、仕事の都合で調査研究のための時間がとりにくい状況である。しかし目撃情報の収集と分析、センサーカメラの設置などはこれまで通り行っている。時間がかかるフンの分析は停止しており、詳細な報告はすぐにはできない。
東京都23区のタヌキなどの目撃情報の報告は次回は2015年1月を予定している。今回と同じく直近の3年間が対象となる。
2013年からは東京都23区でのアブラコウモリを調査する「東京コウモリ探検隊!」を開始した。アブラコウモリはタヌキなどよりも観察は非常に簡単である。ぜひ多くの方に参加していただきたい。
この調査研究は全国の皆さまから寄せられる目撃情報によって成り立っている。情報を寄せていただいた多くの方々にまず感謝をしなければならない。フンの回収やセンサーカメラの設置など特別のご協力をいただいた方々にも深く感謝する。
そして都会でしっかりと生活し、時々私たちの前に姿を見せてくれるタヌキやハクビシンたちにも感謝する(残念ながらアライグマは外来生物なので感謝はできない)。
東京タヌキ探検隊!のホームページ
東京タヌキ探検隊!の過去の報告書は次のページから見ることができる。
http://tokyotanuki.jp/reports.htm
東京コウモリ探検隊!のホームページ
[文献1] 「東京都23区内のタヌキ、ハクビシン、アライグマの目撃情報の集計と分析(2012年1月版)」 「考察1:練馬区のパラドックス」の項を参照のこと
http://tokyotanuki.jp/docs/tanuki1201.htm
宮本 拓海、2012年
[文献2] 「東京都23区内のタヌキ、ハクビシン、アライグマの目撃情報の集計と分析(2011年1月版)」 「考察2 目撃件数と人口密度の関係」の項を参照のこと
http://tokyotanuki.jp/docs/tanuki1101.htm
宮本 拓海、2011年
[文献3] 「東京都23区内のタヌキの生息数の推定(2012年版)」
http://tokyotanuki.jp/docs/tokyotanuki1208.pdf
宮本 拓海、2012年
「東京都23区のタヌキの生息数は約1000頭」ということは広く知られつつあるが、その根拠を示しているのは宮本だけである。
[文献4] 「東京都23区内のタヌキ、ハクビシン、アライグマの目撃情報の集計と分析(2013年1月版)」
http://tokyotanuki.jp/docs/tanuki1301.htm
宮本 拓海、2013年
[文献5] いきもの通信 Vol. 572(2013/11/10)[今日の事件]白いタヌキが現れる確率
http://ikimonotuusin.com/doc/572.htm
宮本 拓海
[文献6] 手持ちの書籍をあらためて探してみたが、「狸の話」(著・宮沢光顕、発行・有峰書店新社、1978年、宮本が所持しているのは第3版)のp20〜22にいくつかの話が紹介されている程度しか見つからなかった。
[文献7] 「ホンドキツネ:生息の可能性高まる 戸田ケ原でフン発見 自然再生の象徴に/埼玉」
毎日新聞ホームページ、2011年10月3日掲載。
[文献8] 「ホンドギツネ撮影 所沢の狭山丘陵 県平野部で絶滅危惧種」
東京新聞ホームページ、2012年5月25日掲載。
[文献9] 「国立市・谷保でキツネ被害-谷保天満宮の鶏激減、注意呼び掛ける」
立川経済新聞ホームページ、2013年5月23日掲載。
本稿に掲載した地図は国土地理院発行の以下の数値地図を複製・使用した。
「数値地図5mメッシュ(標高) 東京都区部」
「数値地図50mメッシュ(標高) 日本II」