東京タヌキ探検隊タイトル

東京タヌキタイムズ

108号(2017年12月) 緊急解説編

本来なら今回からは別のテーマの章を始める予定でしたが、それを変更してタヌキたちについて誤解されていることについて解説をしていくことにします。

町内でタヌキが大増殖?

[タヌキ] [ハクビシン] [アライグマ]

(※ここではタヌキを例にしていますが、ハクビシンやアライグマでも同じことです。)

ある日突然、10頭近くのタヌキがわらわらと現れた! ということは東京都23区でも実際に起こりうることです。たくさん現れたタヌキを見て、「タヌキが大増殖している!」「町内にタヌキがあふれるようになるのではないか?」と思う人がいるかもしれません。

ですが冷静に考えてみましょう。
繁殖力が高いと言われるネズミやゴキブリでさえ、無限に増殖するわけではありません。町を埋め尽くすことすらありません。
また、どこかでタヌキやハクビシンが大増殖したという話を聞いたことがあるでしょうか。そんな話はどこにもありません。
タヌキがたくさん現れても心配はしなくていいのです。

「10頭近くのタヌキ」の正体はタヌキの親子です。
タヌキは普通4〜8頭を産みます。これに両親を加えると10頭を超える数になることがあるわけです。
タヌキが親子そろって生活するのは子どもが小さい頃だけです。東京都23区では子どもが巣から外に出てくるのが6月中旬ごろです。そして秋には子どもは親離れして分散していきます。同時に多数のタヌキを目撃できるのは夏の数ヶ月の間だけのことです。
秋になればタヌキの姿を見る機会はほとんどなくなるでしょう。

もっと理屈を考えてみましょう。
動物が生きていくには食べ物が必要です。一般的には食べ物が多ければ生息数も多くなります。もちろん自然環境などの要因にも左右されますが、食べるものが無ければ生きていけないという法則は覆せません。
ネズミやゴキブリが無限に増殖できない理由も、食べ物の量に上限があるからなのです。食べるものが有限ならば動物もある程度以上に増えることはない、これはどの動物にも当てはまります。

都会にはタヌキたちの食べ物は豊富にあるわけではなく、生息数を増やすことは非常に難しいです。東京都23区内にはタヌキは500〜1000頭、ハクビシンは1000〜2000頭が生息していると推測されますが、これが2倍になることすら難しいと私は予測しています。実際、タヌキもハクビシンも生息数が急増している兆候はありません。

山野なら食べ物がたくさんあるからいくらでも増えるだろう、というのも誤解です。動物は何でもかんでも手当たり次第に食べているのではありません。実際には好みの食べ物は動物種によってだいたい決まっていて、無限に獲得できるものではありません。

そもそもタヌキなどは大集団を作る動物ではありません。多数になるのは子育てをしている期間だけです。
大集団を作らないということは生息密度があまり高くならないようにタヌキたち自身が行動範囲を調整しているのだろうと推測できます。
ですので山野でもタヌキたちがあふれることはありえないのです。

「町内でたくさんの人がタヌキを目撃している! タヌキが大増殖しているに違いない!」と考えるのも誤りです。
たくさんの人が目撃したとしても実際にタヌキがたくさんいるわけではなく、同じ個体が繰り返し目撃されているのです。

タヌキは子だくさんだからすぐに大増殖する?

[タヌキ]

上にも書いたように、タヌキは普通4〜8頭を産みます。文献によっては最大19頭と書かれているものもありますが、それはかなり特殊な例で、現実的には4〜8頭の範囲にほとんど収まっているはずです。
なお、タヌキの出産は年に1回だけです。東京都23区での出産時期は4月後半から5月前半と推測されます。

この出産数はとんでもない繁殖力のように思えるかもしれません。ですが、タヌキが短期的(数年内)に爆発的に数を増やしたという例はありません。
その理由として推測されるのは「生後1年以内に大半が死亡するから」ということです。
タヌキは生まれた翌年には出産の能力を持っています。ですから1年間生きのびることができれば子を産むことができます。逆に1年間生きのびることができなければ子を産むことはできないわけで、生息数を増やすことはできません。
ですから、タヌキの数が増えないということは幼いタヌキの死亡率がかなり高いことを示していると推測できるのです。

これはタヌキに限らずすべての野生動物に言えることです。
人間は医療のおかげで乳幼児の死亡率はかなり低くなっていますが、医療の恩恵を受けられない野生動物では幼い頃の死亡率はかなり高いものなのです。

[ハクビシン]

ハクビシンは1〜4頭を産みます。
年に2回出産すると書かれていることがありますが、実際には大半が年1回だろうと推測しています。
年2回出産というのは食べ物が十分にある飼育下ではありえることかもしれません。ですが自然界はそのような好環境ばかりではありません。

東京タヌキ探検隊!のデータベースに記録されている事例からは、夏から秋にかけて出産することが多いらしいことがわかります(親子連れらしいハクビシンの目撃例から推測)。
もし年2回出産するならば春ごろにも親子のハクビシンが目撃されるはずなのですが、そのような例は少ないです。
このことからも年2回出産する例は少ないのだろうと推測されます。

[アライグマ]

ちなみにアライグマは普通3〜4頭を産みます。

いずれにしてもハクビシン、アライグマの繁殖力は突出しているということはありません。

109号(2018年1月)

東京都23区にタヌキが1000頭もいるって、多すぎない?

東京都23区内にはタヌキは500〜1000頭、ハクビシンは1000〜2000頭が生息しているというのが私の推測ですが、この数字を聞いてあなたは多いと思うでしょうか、少ないと思うでしょうか。

ちなみに東京都23区内にはヒトは920万頭以上が生息しています。単純計算でもヒトはタヌキの9000倍以上も生息しているのです。ヒトが多すぎることのほうがよっぽど問題ではありませんか?

この比率からわかるように、タヌキやハクビシンの生息密度は極めて低いもので、遭遇するのも簡単ではありません。
1000頭、2000頭というのは騒ぐほどのレベルではないのです。(大型動物だとそうもいきませんが。)

東京都23区でタヌキやハクビシンが急増している?

ここ10年ほど、メディアなどで東京23区のタヌキやハクビシンが取り上げられる機会が増えてきたように思います。これには東京タヌキ探検隊!の貢献も少なからずあったと言えるでしょう。
一方で、ハクビシンが天井裏にすみつくといった被害が注目されるようになったことも大きな理由でしょう。

このようにメディアなどで取り上げられる機会が増えると、「最近、タヌキやハクビシンが急増している」と思ってしまいがちです。
実際のところはどうなのでしょうか。

目撃情報数の推移(1999〜2017年)

上のグラフは、東京タヌキ探検隊!が2017年末までに記録した目撃情報数の推移です。

※重要※
このグラフでは2007年ごろにタヌキとハクビシンの目撃情報が急増していますが、これはこれらの動物の生息数が増えたということではありません。
東京タヌキ探検隊!の活動はほとんどがインターネット上で行われています。ですので、パソコンとインターネットがある程度普及していないと情報がなかなか集まらなかったのです。
2007年ごろになってパソコンとインターネットがようやく十分に普及し、東京タヌキ探検隊!のシステムがうまく機能するようになったのです。
また、タヌキ以外のハクビシン、アライグマなどの目撃情報の提供を本格的に呼びかけはじめたのは2008年からです。 よって、このグラフで信用できるのは2009年以降のみなのです。この点、ご注意ください。

また、目撃情報数と生息数は必ずしも強い相関関係があるとは言えません。ただし長期的には同じ傾向を示すだろうと予測されますので、このグラフもまったく無意味なものではありません。

グラフのように2009年以降の目撃情報数は、タヌキは減少傾向です。ハクビシンは上下しながらもある程度の幅に収まっています。アライグマはずっと低いままです。
つまり、タヌキもハクビシンもアライグマも目撃情報数は急増しておらず、生息数も急増してはいないと推測できます。 また、今後生息数が急増することもないでしょう。その理由は上に述べたように食べ物に上限があるからです。
現時点(2010年代)ではこれらの動物の生息数は安定期に入っていると言えるでしょう。

タヌキはいつから東京都23区にいるの?

[タヌキ]

「東京都23区にタヌキがいる」というと、「山から来たんだ」と思う人は多いようです。

私の推測はそれとは違います。「タヌキはずっと昔から東京都23区にいた」のです。どれぐらい昔かというと、まあ、「有史以来」とでも言いましょうか。江戸時代は当然ですが、明治時代や大正時代にもタヌキは生息していました。
現在のタヌキの生息状況を見ると、昭和の高度成長期でもタヌキはどこかで生き長らえてきたと考えられます。

[ハクビシン] [アライグマ]

一方、ハクビシンは最近東京都23区に進出してきたのは間違いありません。
それがいつのことかは正確にはわかりませんが、横浜市を取り上げた調査研究では2000年ごろから急速に分布を広げていることがわかります(※)。

「ハクビシンの横浜市内への進出について」(板橋、他、2010年)

東京都の場合もほぼ同じ時期と推測されます。遅くとも2009年までには23区全域に行き渡っていたようです。

それに対して、アライグマは増加する様子は見られません。都市部の生活はアライグマに向かないということかもしれません。
私の仮説は「ハクビシンとアライグマは競合する」ということです。ハクビシンとアライグマはどちらも果実が好きで、民家などの天井裏にすみつくことがあります。生態が似ているために、両者が同時に繁栄することができないのではないかと推測しています。
東京都23区ではハクビシンが繁栄しているためアライグマが増えることができず、逆に関西ではアライグマの方が繁栄しているように見えます(関西での生息数の推計の数字を私は知りませんが)。

ハクビシンとタヌキはそれほど競合しないようです。東京都23区で両者が生息数を維持しているのがその証拠です。 タヌキは木に登れないため地面にあるものを食べ、ハクビシンは木に登れるため樹上のものを食べる。タヌキは緑地を主な生息地にしているが、ハクビシンは住宅地にも進出している。このような違いがあるために競合せずにすんでいるのかもしれません。

110号(2018年2月)

タヌキは何を食べている?

「アライグマがを人を襲う」とか「ハクビシンは凶暴」といった話をどこかで聞いたことはありませんか?
それは本当のことでしょうか?
ここからはこの疑問について順を追って解説していくことにします。

まず最初はタヌキ/ハクビシン/アライグマは何を食べているのかについてです。

雑食動物はなんでも食べる?

タヌキは「雑食」と言われます。
が、雑食の前に説明しなければならないことがあります。

「肉食」という言葉があります。
「草食」という言葉があります。
どちらもその意味は皆さんなんとなく理解していることでしょう。

ただ、動物学の世界ではこの言葉はちょっとあいまいな意味になってしまいます。
例えば、肉食動物は肉だけを食べているのではありません。内臓や骨も食べます。また、一般的には「肉」と認識されない昆虫を食べる動物もいます。
草食動物も草だけを食べるのではありません。果実を食べる動物は多いですし、中にはゾウのように木を食べるものもいます。

そのため、より適切な言葉は
「動物食」(動物性のものを食べる)
「植物食」(植物性のものを食べる)
となります。

「動物食」「植物食」はさらに細分されます。
動物食は対象の分類によって「魚食」「昆虫食」などに分けられます。
植物食は対象の部位によって「草食」「果実食」「蜜食」などに分けられます。
私たちは普通に肉食、草食と言ってしまいますが、その内容はさまざまであることに注意してください。

そして「雑食」です。
この意味を「なんでも食べる」と考えている人はかなり多いようです。
しかし、なんでも食べるということは石を食べるのでしょうか? 砂を食べるのでしょうか? ガラスを食べるのでしょうか? そんな動物はいませんよね。

「雑食」の正確な意味は、「動物性のものも植物性のものも両方食べる」ということです。私たち人間はまさに雑食です。

「動物食」「植物食」「雑食」という言葉は便利ですが、「ネコは動物食」とか「タヌキは雑食」という説明ではその動物の食性を説明したことにはなりません。
実際の動物では食べる物の種類はかなり限定されており、動物食動物でも大型哺乳類から昆虫までなんでも食べるということはありません。
タヌキたちを例に具体的に何を食べるか見ていきましょう。

タヌキの食べ物

[タヌキ]

タヌキが食べる動物性のもののメインは昆虫です。
大きなものではコガネムシ類、セミの幼虫、カマキリ類、ケラなどがあります。セミの幼虫は羽化のために地面から出てきたところを捕まえるようです。
フンの内容物にはアリもよく入っていますが、意識して食べているのか、たまたま他の食べ物といっしょに飲み込んでしまったのかがよくわかりません。ただ、アリの巣穴を掘り返したらしい例もありますので、幼虫・さなぎを食べているのかもしれません。
昆虫ではありませんが、ムカデも食べます。
脊椎動物ではカエルやネズミなどの小型動物を食べています。

フンの内容物からは鳥の羽毛が出てくることがありますが、生きている鳥をハンティングするほどタヌキは器用ではありません。おそらく死んだ、あるいは死にかけている鳥を食べているのでしょう。そもそもタヌキは夜行性ですから、活動時間帯に鳥に遭遇する機会はかなり少ないはずです。

例外的ですが、タヌキはニワトリに執着する例が知られています。飛べないニワトリならタヌキでもハンティング可能のようです。ニワトリを飼育している方は気をつけてください。

タヌキが食べる動物の共通点は、いずれも地上付近にいて、小型で、動きは素早くなく、簡単に捕獲できるということです。このことからタヌキはライオンやオオカミのようなハンター(狩猟者)ではないということがわかります。

タヌキが食べる植物性のものは果実です。
例えばカキノキ(柿)、イチョウ(銀杏)、ムクノキなどの果実を食べています。
これらの果実には共通点があり、地面に近いところに果実がある、または果実がよく地面に落ちるという特徴があります。
カキノキはそれほど頻繁に落下しませんが、1個だけでも落ちていればかなりの分量になりますのでタヌキにとっては要チェック箇所となります。
このことからは、タヌキは木登りしない動物だということも推測できます。
フンの内容物には草が混じっていることがありますが、量は少なく主食ということはありません。イヌが時々草を食べるのと同じようなことなのでしょう。

以上をまとめると、タヌキの主食は「昆虫」と「果実」であると言えます。それぞれ動物性のものと植物性のものなので確かに「雑食」です。

なお、フンの内容物には明らかに人間由来のものも入っています。私自身で調べてみた例ですが、輪ゴム、ビニールは「定番」のようなものです。珍しいものでは「スライスされたシイタケ」や「マドレーヌ(洋菓子)の敷紙」といったものもありました。どうも生ゴミを食べる例もあるようです(ただし、その目撃例はまだありません)。 また、庭に置いたネコのエサを食べに来る例は珍しくありません。
これらのものは動物・植物・非生物まとめて「人間由来物」と私は呼んでいます。

111号(2018年3月)

ハクビシンの食べ物

[ハクビシン]

ハクビシンの場合はどうでしょうか。

私自身がフンの内容物を調べたところでは、東京都23区の場合は種子ばかりが出てきました。具体的にはカキノキ、ビワがメインです。また、目撃情報からは桜桃(サクランボ)やブドウ、柑橘類などさまざまな果実を食べていることがわかります。
ハクビシンの主食は果実といってもいいでしょう。
傾向としては、甘い果実が特に好きなようで、この点は人間の味覚の好みに近いのかもしれないと思えるほどです。
東京都23区外のフンからは昆虫の断片が出てきました。

以下の文献によると、カエルや昆虫などの小動物も食べています。

「群馬県におけるハクビシンの食性と生息状況」(姉崎、坂庭、田中、2010年)

ただ、果実が大好物であるのは確かで、ハクビシンは雑食ではあるものの「極端な果実食」と言った方が正確でしょう。

この食性は果実農家にとっては脅威でしかありません。まとまって果実が成っている果樹園はハクビシンにとってはパラダイスです。しかもハクビシンは軽々と木登りができるので、対抗策も難しいものがあります。

ちなみに、ハクビシンがニワトリを襲ったという話もあるようですが、私としてはどうも本当かどうか確信が持てません。ですが、ありえない話ではありませんので注意はするべきです。

アライグマの食べ物

[アライグマ]

アライグマも雑食です。

動物性のものは、昆虫、小型哺乳類、カエル、甲殻類などかなり幅が広いようです。ニワトリを襲う例もあります。希少なサンショウウオ類を食べるため、絶滅が心配される例もあります。

特筆すべきは魚を食べることです。アライグマは前足で器用にものをつかむことができます。魚もつかむことができます。これはタヌキなどにはできないことです(イヌやネコの手ではものをつかめない)。
庭の池や屋外の水槽の魚がいつの間にか食べられていた、という事件が時々発生していますが犯人はアライグマと推測されます(他にもイタチやサギ類が容疑者になることがあります)。食べられるのはコイ、フナ、金魚、メダカなど。住人が気がつかないこともあるほどです。
フタや囲いなどをして魚に手が届かないようにするのが有効な対策です。ですが、水槽にフタをのせるぐらいでは簡単にどかしてしまいます。多少の重しを置いても無駄です。フタや囲いはカギで固定するようにしなければなりません。

植物性の食べ物は果実です。
アライグマは農作物被害でよく知られています。特に北海道ではトウモロコシの被害が甚大です。メロン、スイカ、イチゴなども被害にあっています。ハクビシン同様に木登りができるので果実農家にとってはやっかいな相手です。

駆除業界では、アライグマの好物がお菓子の「キャラメルコーン」であることが知られているようです。ワナで捕獲する時にキャラメルコーンを使うのです。

アナグマの食べ物

[アナグマ]

アナグマも雑食です。

動物性のものは、昆虫、小型哺乳類、カエルなどを食べます。ミミズも重要な食べ物のひとつです。特技の穴掘りをいかしているというわけです。
ニワトリを襲う例もあります。

植物性の食べ物は果実です。

キツネの食べ物

[キツネ]

キツネも雑食です。

動物性のものはネズミ類、ウサギ類、鳥類、昆虫などです。タヌキに比べるとより活動的な動物(ネズミ、ウサギ)を食べています。このことからキツネは優秀なハンターだとわかります。
ニワトリも当然獲物です(ニワトリはタヌキたちにとってはちょうどいい標的のようです)。

ネズミ類、ウサギ類は都市部ではなかなか見られません(ここでのネズミとは野外に生息するネズミのことで、都市部に多いクマネズミ、ドブネズミのことではありません)。そのためキツネは都市部への進出が難しくなっています。実際、東京都23区ではキツネは定住していません(目撃例はありますが、一時的に23区内に入って来ただけのようです)。
ネズミやウサギがいるのは広大な野原です。それは例えば広い河川敷、ゴルフ場、農地といった場所です。もしキツネが東京都23区に進出してくるなら、多摩川や荒川、江戸川の河川敷に沿ってやって来る可能性が高いのです。

植物性のものは果実(特に漿果=ベリー類)を食べます。

ここまでのまとめ

ここまで見てきたように、同じ「雑食」でも食べる内容は種によって異なっていることがわかります。タヌキたちの場合は重なる部分が多いと言えますが、微妙に異なってもいます。そして生息する場所の自然環境によっても食べ物は異なってくるでしょう。
これは「動物食」の動物でも「植物食」の動物でも同じで、具体的な食べ物の内容は動物の種、生息地の環境によって異なっています。

(別に解説しますが、都市部ではタヌキたちは外ネコのエサや生ゴミなど人間由来物も食べています。)

「動物食」「植物食」「雑食」という言葉は便利ですが、実際は大雑把すぎて何も説明していないも同然です。動物の食べ物を語るならば、より具体的に例を挙げなければなりません。

タヌキたちに共通して言えることは、自分よりも大きな動物を襲って食べるようなことはない、ということです。自分よりずっと小さな動物を食べています。タヌキたちが積極的に人間を襲うことはありえないのです。

112号(2018年4月)

強い、弱い

「世界最強の動物は何か?」という問いは私たちの興味を引きつけるものがあります。ここでは陸上の哺乳類に限定して話を進めますが、その場合ライオンかトラの名前が最強として普通は挙げられるでしょう。

ただし、1対1で戦った場合、ライオンもトラもかなわない相手がいます。
そんな動物いるわけない!と思われるかもしれませんが、います。

それは例えばゾウ、キリン、カバです。
ぜひいろんな文献や映像を調べてほしいのですが、ライオン、トラが1対1でゾウ、キリン、カバを倒した例はまずないはずです。相手が重病とか、子どもという場合は別ですよ。

なぜゾウ、キリン、カバに勝てないのか。 その理由を単純化して言うと「体重比が大きすぎるから」なのです。

これらの動物の体重を比較してみましょう(数値はWikipediaなどより。文献によって数値はさまざまである)。

アフリカゾウ オス6000kg、メス3000kg
キリン 1400kg
カバ 1400〜3200kg

ライオン オス150〜225kg、メス120〜182kg
アムールトラ オス180〜306kg、メス100〜167kg
 ※アムールトラはトラの亜種の中で最も大きい。

普通乗用車の重さは1000kgを越える程度ですから、キリンはそれに近いことになります。ライオンやトラは力士と同程度というところです。ゾウのような重量級の動物が勢い良く突っ込んできたらライオンも無傷ではすみません。
ゾウ、キリン、カバとライオン、トラでは体重が1ケタ違います。大ざっぱに言えば10倍の体重比です。これだけの差があるとライオン、トラでもかなわないのです。

しかし現実ではライオンがゾウやキリンを襲う例はあります。
1対1で挑むような無謀なことはしません。複数頭で襲います。そして、狙うのは子ども、つまり体重が軽い個体です。
これなら体重比のハンディを帳消しにでき、うまくいけばライオンの合計体重の方が上回ります。体重比を同等以上にできれば、ハンティング能力に優れたライオンの方が有利になります。
(同行するおとなのゾウたちが加勢すると勝ち目はなくなりますが…。)

このように、動物の強い・弱いは一般的には体重比で説明することができます。

タヌキやハクビシンやアライグマが小動物を食べるのは、体重比が大きいため労力が圧倒的に少なくてすむからです。
さらに、果実などの植物は逃げたりすることがありませんので最も低コストで入手できるありがたい食べ物なのです。

タヌキやハクビシンやアライグマがヒトを襲わないのは明らかにヒトの方が体重で勝っているからです。
体重を比べてみましょう。

ヒト 60kg

タヌキ 3.6〜6kg
ハクビシン 3.6〜6kg
アライグマ 6〜7kg
アナグマ 10〜16kg
キツネ 3.3〜6.8kg

ここでも体重は1ケタの違いがあります。つまりタヌキたちから見たヒトは、ライオンから見たゾウやキリンにも匹敵する大きさなのです。
あなたはゾウやキリンと素手で戦いたいと思いますか? 思いませんよね。タヌキたちにとってヒトとはそういう存在なのです。
もし道端でタヌキやハクビシンなどにばったり出くわしたとしても、ヒトを襲ってくることはまずありえません。

ハクビシンがネコを襲う?

[ハクビシン]

東京タヌキ探検隊!に送られてくる目撃情報メールの中に、数は少ないですが「ハクビシンがネコを襲ったのではないか」と書かれていることがあります。襲撃の瞬間を目撃したのではなく、ネコが大ケガをしていた、ネコを見かけなくなった、ネコか何かの動物の大きな声を聞いた、だからハクビシンがあやしい、という内容です。

東京タヌキ探検隊!のデータベースの記録には、タヌキ、ハクビシンなどがお互いに、あるいは同程度の体格のネコ、イヌなどと直接格闘したというものはほとんどありません。
このことからも、タヌキやハクビシンやネコなどがお互いに日夜闘争を繰り返しているということはありえません。

前の項目で見たようにタヌキやハクビシンなどが食べる動物は自分よりもずっと小型な相手です。自分と同じぐらいの体格の相手と戦うとなると自分自身もケガをするリスクを負うことになります。
そんなことをしなくても食べていけるのですからわざわざ戦う必要はありません。
「ハクビシンがネコを襲う」という説は非常に疑わしいです。

ただし、小さな幼獣を襲うとことはありえるかもしれません。襲うのはハクビシンかもネコかもしれません。どの動物も犯人になりえますのでハクビシンだけを非難するのは間違いです。

113号(2018年5月)

ハクビシンは凶暴?

なぜだかはわかりませんが、「ハクビシンは凶暴」と思われているようです。
ですが、その凶暴を経験した人も、どのように凶暴なのかを説明できる人もほとんどいないでしょう。「凶暴」というのは実は人間がいつの間にか作り上げてしまったイメージなのです。

「ハクビシンは凶暴」というイメージができあがってしまった原因には心当たりがあります。
例えばテレビのニュース番組などでハクビシン被害が取り上げられることがあります。その映像でのハクビシンはオリ(箱ワナ)に閉じ込められていて、近づく人間に威嚇していたかもしれません。
あるいは天井裏で駆除業者に追い詰められて反撃をしてきた映像が放映されたかもしれません。そこだけ見れば確かに凶暴そうです。

ですが冷静に考えてみてください。そういう状況で威嚇したり反撃したりするのは不思議な事ではありません。多くの動物はそうするものではないでしょうか。このような例を挙げて「凶暴」と言うのは正しくありません。
(駆除業者は危険性をあおりたてた方が商売になるのでおおげさに表現する傾向があります。)

ここで私から質問です。
「凶暴」とはどういう意味ですか? 「凶暴」を具体的に定義してください。

どうでしょう?

「人を襲えば凶暴」
「威嚇してくるなら凶暴」
「ぎゃーぎゃー騒ぎ回るなら凶暴」
「にらみつけてくるなら凶暴」
人によって定義はいろいろでしょう。
大辞林には「手がつけられないほど激しく暴れること(さま)」と載っていますが、具体的な説明とは言えませんね…。

私が懸念しているのは、人によって意味がばらばらな「凶暴」という言葉が流通することによってハクビシンが実態以上の悪者にさせられているのではないか、ということです。

「追い詰められた状況ではないのに人間にケガを負わせる」(噛みついたり、ひっかいたりする)ということであれば「凶暴」と言ってもいいと思われますので、以下ではそう定義することにしましょう。

凶暴事例

タヌキやハクビシンやアライグマは本当にヒトを襲わないのか?
東京タヌキ探検隊!のデータベースに記録された事例から検証してみましょう(全国対象)。

「凶暴」な事例は確かにあります。が、事例数はとても少ないです。

[アライグマ]

凶暴事例としてまず挙げるのはアライグマです。
これはニュースにもなった事件ですが、2011年7月、兵庫県伊丹市、尼崎市でアライグマが人間を襲うという事件が複数発生しました。私がニュースなどで確認したのは6件ですが、実際には8件発生したようです。(DBN1578、1587、1597、1616、1625、1629)
記録した6件で共通するのは、イヌの散歩中だったこと、アライグマがまず襲ったのはイヌの方だったことです。アライグマを引き離そうとして人間もかみつかれたり引っかかれたりしています。
2014年は大阪府池田市で2件、アライグマが人間を襲う事件がありました(DBN3049、3116)。こちらではイヌがいっしょだったかは不明です。内1件ではアライグマの子どももいたことがわかっています。
データベースでのアライグマの記録件数は多くはないのに凶暴事例の割合はかなり高いと言えます。
この他にも報道されなかった事件があったかもしれませんし、ケガまでは至らず回避できた事例はさらに多かったのではないかと推測されます。

[ハクビシン]

次はハクビシンでの事例です。人間に被害がなかった例も含みます。

・ハクビシンがネコに向かって飛びかかってきた。ただし金網をはさんでの攻撃なので被害は無し。(DBN1969、2012年、練馬区)

・ハクビシンが人間に飛びかかってきた。室内飼いのイヌが先にハクビシンに気づいていた。(DBN3120、2014年、練馬区)

・イヌの散歩中にハクビシンに遭遇。イヌが近づくとイヌにかみついてきた。(DBN3180、2014年、板橋区)

・イヌ3頭の散歩中にハクビシンが現れ、小型犬にかみつく(ケガは無し)。他2頭は中型犬、大型犬。かみついた後もハクビシンは追跡してきた。1年前も同様にイヌたちに飛びかかってきたことがあるという。(DBN3629、2015年、神奈川県平塚市)

以上の例を見ると、「イヌを襲う」という共通の要素があることがわかります。犬種ではだいたい小型犬のようです。
もうひとつ、明確ではありませんが、アライグマ、ハクビシンは子連れだった可能性が高いようです。子どもは見えない場所に隠しているでしょうから、いるかいないかはっきりしないこともあるでしょう。
ここからひとつの仮説が導き出せます。つまり、アライグマやハクビシンは子どもを守ろうとして過剰防衛行動に出たのではないだろうか、ということです。人間やイヌがたまたまアライグマ、ハクビシン親子に近づきすぎたためアライグマ、ハクビシンがそれ以上近づけさせないよう攻撃してきたのではないでしょうか。
そして、襲うなら大きな人間ではなく、体格が小さいイヌです。これは理にかなった戦術です。
襲撃事例は多かれ少なかれこの状況に一致しているようです。

襲撃を防ぐ方法があればいいのですが、突然襲ってきますから予防しようがありません。、アライグマ、ハクビシン親子がいる場所も前もってわかるものではありません。
あえて対策を挙げるなら、アライグマ、ハクビシンは主に夜行性ですのでイヌの散歩は昼の方が良いかもしれません。
また、アライグマ、ハクビシンが住みついている場所、よく目撃される場所は散歩ルートから外したほうが良いでしょう。といってもそういうことが前もってわかることもなかなかないでしょうが。

子どもがある程度成長すれば、親も攻撃的になることはないとも予想されます。本当に危険なのは子どもが小さい数ヶ月以内だけのことでしょう。

襲撃ではなく威嚇だけの例はタヌキ、ハクビシン、アライグマであります。件数ではハクビシンが多いです。

[タヌキ]

タヌキの場合は威嚇の例はあるものの、かみついてくるような凶暴事例はまったく記録されていません。こう見るとタヌキはとてもおとなしいんだな、ということがよくわかります。

タヌキ件数 
目撃情報数2128 
威嚇事例50.2%
襲撃事例00%

ハクビシン件数 
目撃情報数2395 
威嚇事例291.2%
襲撃事例40.2%

アライグマ件数 
目撃情報数297 
威嚇事例51.7%
襲撃事例82.7%

データベースに記録されている全5000件(全動物、全国、2018年5月現在)での襲撃・威嚇の件数は上の通りです。

襲撃事例は上記の十数件だけ、全体から見れば数%以下なのです。
アライグマ、ハクビシンが攻撃してくるのは限定的な状況の時だけで、普通はまったく問題ありません。
このリスクを高いと考えるか低いと考えるかは人それぞれの判断ですが、どういう状況で起こりやすいかがわかっていればむやみに恐れることではないでしょう。

114号(2018年6月)

タヌキたちは生ゴミを食べる

タヌキやハクビシンやアライグマといった野生動物がなぜ都会でも生きていけるのか。その理由のひとつは「食べ物があるから」です。しかし、都会のどこに食べ物があるのでしょうか。

タヌキの場合は緑地を主な活動場所にしており、地面にいる昆虫やミミズなどの小動物、地面に落ちたあるいは地面に近い位置の果実を食べていると推測できます。
ハクビシンは樹木にも簡単に登れるのでさまざまな果実を食べているようです。

ただ、いつもそう都合よく食べ物があるわけでもありません。

動物のフンを調べると、消化できなかったものがその中から見つかります。
私自身が調べたフンからは明らかに生ゴミをあさったと考えられる事例がありました。これについては過去にも報告しています。

東京タヌキタイムズ 2009年5月 タヌキが食べた人間由来物/自然のものも生ゴミも食べています
見つかったもの=ビニールラップ、ピーナッツ、ブドウの種

東京タヌキタイムズ 2009年11月 秋の夜、隣は何を食う人ぞ/タヌキ(のフン)は何でも知っている?
見つかったもの=エノキタケ、スライスされたシイタケ

東京タヌキタイムズ 2012年3月 どこで買ったかマドレーヌ?/フンから出てきた奇妙な物
見つかったもの=マドレーヌ(焼き菓子)の敷き紙

このようにタヌキは間違いなく生ゴミを食べているようです。おそらくハクビシン、アライグマも。

ただ、疑問もあります。東京都23区の場合、ゴミを出すのは朝になってからで、夜行性のタヌキはもう寝ているかもしれない時間帯です。ゴミが出ている時間帯とタヌキの活動する時間帯がずれていることが私としては納得できないのです。

また、生ゴミをあさっている姿が目撃された事例がまだありません。人間に見つからないようにしていても目撃されるものなのでこれはちょっと不思議です。タヌキが食べているのはポイ捨てされたゴミなのかもしれません。
飲食店などでは夜中に屋外にゴミを出すのでそれを食べているのかもしれません。ただし、上で紹介した事例では近くに飲食店はありませんでした。

タヌキたちはネコエサを食べる

タヌキが、ハクビシンが、アライグマがネコのエサを食べに来る、という事例は実は珍しくはありません。あちこちで普通に起こっていることのようです。

民家の庭に外ネコ(屋外で生活しているネコ)のためにキャットフードを置いているとタヌキなどが食べに来る、あるいは地域ネコの食事場所にキャットフードを置くとタヌキなどが食べに来る、というのが定番のパターンです。

タヌキたちは深夜に来たり、人がいない時間帯に来たりするので、エサを置いた人がそのことに気づいていないことも多いようです。

ネコエサを食べに来る事例は2014年〜2016年ではタヌキ19件、ハクビシン8件、アライグマ5件がありました。実際にはさらに多くの事例があるでしょう。
タヌキたちはネコエサに多かれ少なかれ依存しているのではないか、ということが推測されるのです。

キャットフードは消化されやすいため、フンを調べても痕跡は見つかりません。タヌキたちが何を食べているかを網羅的に調べる方法があればもっといろいろとわかりそうですが、何かいい方法はないものでしょうか?
最近、フンに含まれるDNAを解析して何を食べているかを調べる手法が広まりつつあります。これには特殊な装置や知識も必要となるので私にはできませんが、きっと誰かが調べてくれるだろうと期待しています。

115号(2018年7月)

「雷獣=ハクビシン」説、誰が最初に言い出した?

緊急解説編の最後はこれまでとはちょっと違った話題にしましょう。

日本には「雷獣」という伝説上の動物がいます。落雷とともに落っこちてくる動物、というものだそうです。
現在は「雷獣=ハクビシン」という説が流布しており、Wikipediaにも書かれているほどです。
ですが私の記憶では昔にそういう説を聞いたことはありません。いつからそんな説が広まったんだろう、と調べてみるとどうも自分自身にたどり着いてしまったのです。

時系列で追ってみましょう。

私が東京都23区のタヌキに初めて出会ったのは1998年。この頃はハクビシンのことはよく知りませんでした。

日本でハクビシンが有名になったのはSARS騒動の時でした(SARS=重症急性呼吸器症候群)。
2002年末に中国南部で流行が発生、その後、海外に拡大し、特に2003年春に香港で大流行すると日本でも報道が多くなりました。
2003年5月ごろにハクビシンからSARSウイルスが発見され、ハクビシンが元凶とみなされました。実際にはSARSウイルスはいろいろな哺乳類に感染するため、ハクビシンだけが悪者ではありません。が、この俗説はかなり流布し、ハクビシンが急に注目されるようになりました。
この時にハクビシンという動物を知った日本人は多かったはずです。つまり、これ以前に「雷獣=ハクビシン」説は存在しなかったのではないかと私は考えています。

雷獣とハクビシンを結びつけた文献が現れるのはSARSよりも後のことです。

探せる限りで最初の文献は…
…あれ?、私の文章です。

2004年、川崎市市民ミュージアムで「日本の幻獣 未確認生物出現録」という企画展がありました(2004年7月3日〜2004年9月5日)。
これは私も見に行きました。そのことを書いたのが次のホームページです。

いきもの通信 Vol. 228(2004/7/11)
[今日の展覧会]「日本の幻獣」展(川崎市市民ミュージアム)を見に行った

展示の中には「雷獣のミイラ」も展示されていました。その正体はネコだと思われました。
このホームページの記述では私は雷獣とハクビシンを結びつけてはいません。展示の解説にもハクビシンのことは書かれていなかったようです。

私が雷獣とハクビシンを結びつけた文章を書いたのはさらに後になります。

いきもの通信 Vol. 367(2007/7/1)
[今日の動物探偵!]本所七不思議の謎を解く!その2

ここでは本所七不思議のひとつ、「足洗邸(あしあらいやしき)」の話に絡めて「雷獣=ハクビシン」説を唱えています。

ちなみに東京タヌキ探検隊!でのハクビシンの初記録は2007年12月19日でした(DBN152〜156)。この日、朝日新聞に私の活動についての記事が掲載され、それを読んだ方々が目撃情報をしらせてくれたのですが、その中には明らかにタヌキではなくハクビシンの目撃が混じっていたのです。これはちゃんと記録しておいた方がいい、と判断した私はタヌキと同様にハクビシンそしてアライグマについても記録することにしたのでした。
東京都23区内にハクビシンがいることはSARS騒動の頃から知っていましたが、この2007年12月までは具体的な目撃情報は入手できていませんでした。

次に出た文献は爬虫類学者の千石先生(故人)によるものでした。

「千石正一 十二支動物を食べる 世界の生態文化誌」
2008.2.15 〜「寅」を食べる〜 食う虎 食わぬ虎
(千石正一:動物学者/財団法人自然環境研究センター 研究主幹)

私(宮本)はアスキー勤務時代に「マルテメディア爬虫類両生類図鑑」で千石先生の担当編集者をしていました。ただ、千石先生は爬虫類両生類の専門なのでタヌキやハクビシンについて語り合った記憶はありませんし、私が東京タヌキに関心を持つより以前のことです。
また、2007〜2008年前後には千石先生とはまったく交流はありませんでした。ですのでお互いに直接の影響はありえません。

その次は農林水産省の文書です。

「野生鳥獣被害防止マニュアル ハクビシ」(農林水産省生産局農産振興課環境保全型農業対策室、羽山・竹内・古谷) 平成20年(2008年)版
※Wikipediaには「2007年」とありますが、正しくは「2008年」です。

と、いうことは私が書いた文章が「雷獣=ハクビシン」説の最初だということになるのです。
え、本当?
この以前に執筆年月日が特定できるもっと早い時期の文献があればぜひ教えてください。
ただ、私は何かの文献を読んで「雷獣=ハクビシン」説を書いた、という記憶はありません。

以上のことからわかるのは、「雷獣=ハクビシン」説というのはつい最近提案されたものなのだということです。今現在は「雷獣=ハクビシン」が当たり前のように流布していますが、昔からそう言われていたのではありません。

また、ハクビシンの他にも雷獣とみなされた動物はいるはずです。例えばイタチやネコなど食肉目哺乳類だった可能性もありますし、まったく違った種類の動物がハクビシンとされた可能性もあります。
「雷獣=ハクビシン」説はもっともらしい説明のひとつにすぎず、雷獣はさまざまな動物のイメージが重ねられている存在だと考えた方がいいと思います。

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