東京タヌキ探検隊タイトル

東京タヌキタイムズ

107号(2017年12月) 緊急解説編

本来なら今回からは別のテーマの章を始める予定でしたが、それを変更してタヌキたちについて誤解されていることについて解説をしていくことにします。

町内でタヌキが大増殖?

[タヌキ] [ハクビシン] [アライグマ]

(※ここではタヌキを例にしていますが、ハクビシンやアライグマでも同じことです。)

ある日突然、10頭近くのタヌキがわらわらと現れた! ということは東京都23区でも実際に起こりうることです。たくさん現れたタヌキを見て、「タヌキが大増殖している!」「町内にタヌキがあふれるようになるのではないか?」と思う人がいるかもしれません。

ですが冷静に考えてみましょう。
繁殖力が高いと言われるネズミやゴキブリでさえ、無限に増殖するわけではありません。町を埋め尽くすことすらありません。
また、どこかでタヌキやハクビシンが大増殖したという話を聞いたことがあるでしょうか。そんな話はどこにもありません。
タヌキがたくさん現れても心配はしなくていいのです。

「10頭近くのタヌキ」の正体はタヌキの親子です。
タヌキは普通4〜8頭を産みます。これに両親を加えると10頭を超える数になることがあるわけです。
タヌキが親子そろって生活するのは子どもが小さい頃だけです。東京都23区では子どもが巣から外に出てくるのが6月中旬ごろです。そして秋には子どもは親離れして分散していきます。同時に多数のタヌキを目撃できるのは夏の数ヶ月の間だけのことです。
秋になればタヌキの姿を見る機会はほとんどなくなるでしょう。

もっと理屈を考えてみましょう。
動物が生きていくには食べ物が必要です。一般的には食べ物が多ければ生息数も多くなります。もちろん自然環境などの要因にも左右されますが、食べるものが無ければ生きていけないという法則は覆せません。
ネズミやゴキブリが無限に増殖できない理由も、食べ物の量に上限があるからなのです。食べるものが有限ならば動物もある程度以上に増えることはない、これはどの動物にも当てはまります。

都会にはタヌキたちの食べ物は豊富にあるわけではなく、生息数を増やすことは非常に難しいです。東京都23区内にはタヌキは500〜1000頭、ハクビシンは1000〜2000頭が生息していると推測されますが、これが2倍になることすら難しいと私は予測しています。実際、タヌキもハクビシンも生息数が急増している兆候はありません。

山野なら食べ物がたくさんあるからいくらでも増えるだろう、というのも誤解です。動物は何でもかんでも手当たり次第に食べているのではありません。実際には好みの食べ物は動物種によってだいたい決まっていて、無限に獲得できるものではありません。

そもそもタヌキなどは大集団を作る動物ではありません。多数になるのは子育てをしている期間だけです。
大集団を作らないということは生息密度があまり高くならないようにタヌキたち自身が行動範囲を調整しているのだろうと推測できます。
ですので山野でもタヌキたちがあふれることはありえないのです。

「町内でたくさんの人がタヌキを目撃している! タヌキが大増殖しているに違いない!」と考えるのも誤りです。
たくさんの人が目撃したとしても実際にタヌキがたくさんいるわけではなく、同じ個体が繰り返し目撃されているのです。

タヌキは子だくさんだからすぐに大増殖する?

[タヌキ] [ハクビシン] [アライグマ]

上にも書いたように、タヌキは普通4〜8頭を産みます。文献によっては最大19頭と書かれているものもありますが、それはかなり特殊な例で、現実的には4〜8頭の範囲にほとんど収まっているはずです。
なお、タヌキの出産は年に1回だけです。東京都23区での出産時期は4月後半から5月前半と推測されます。

この出産数はとんでもない繁殖力のように思えるかもしれません。ですが、タヌキが短期的(数年内)に爆発的に数を増やしたという例はありません。
その理由として推測されるのは「生後1年以内に大半が死亡するから」ということです。
タヌキは生まれた翌年には出産の能力を持っています。ですから1年間生きのびることができれば子を産むことができます。逆に1年間生きのびることができなければ子を産むことはできないわけで、生息数を増やすことはできません。
ですから、タヌキの数が増えないということは幼いタヌキの死亡率がかなり高いことを示していると推測できるのです。

これはタヌキに限らずすべての野生動物に言えることです。
人間は医療のおかげで乳幼児の死亡率はかなり低くなっていますが、医療の恩恵を受けられない野生動物では幼い頃の死亡率はかなり高いものなのです。

ハクビシンは1〜4頭を産みます。
年に2回出産すると書かれていることがありますが、実際には大半が年1回だろうと推測しています。
年2回出産というのは食べ物が十分にある飼育下ではありえることかもしれません。ですが自然界はそのような好環境ばかりではありません。

東京タヌキ探検隊!のデータベースに記録されている事例からは、夏から秋にかけて出産することが多いらしいことがわかります(親子連れらしいハクビシンの目撃例から推測)。
もし年2回出産するならば春ごろにも親子のハクビシンが目撃されるはずなのですが、そのような例は少ないです。
このことからも年2回出産する例は少ないのだろうと推測されます。

ちなみにアライグマは普通3〜4頭を産みます。

いずれにしてもハクビシン、アライグマの繁殖力は突出しているということはありません。

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