東京タヌキ探検隊タイトル

東京タヌキタイムズ

125号(2019年5月) 東京都23区のタヌキの生息分布 概要

各グループの詳細の前に、全体の概要を説明すべきであったのを忘れていましたので、ここであらためて記します。

生息分布地図

タヌキ生息分布図

Googleマップが開きます。

注意点

・「サブグループ」は継続的にタヌキが定住している地域を表す。

・「グループ」はサブグループを地理的にまとめたものである。血縁関係・家族関係があるという意味ではない。

・グループ、サブグループの名称は原則として地名を採用している。

・サブグループに含まれる生息数は決まっていない。ただし継続的に定住しているということは1つがい以上が生息していることを意味する。

・サブグループの領域外にはタヌキがまったく生息していないという意味ではない。サブグループの領域(境界線)は便宜的なものでしかなく、その外側にも当然タヌキは生息している可能性はある。サブグループの領域外にタヌキを見つけても自慢にはならない。

・サブグループの領域内ではタヌキが均一に分布しているわけではない。

・意図的に地図に載せていない個体群もある。存在が知られることで生息に影響があるのではないかと心配されるからである。逆にあえて公表することで注意を促している場合もある。

・この情報を元にタヌキを探しても発見できる確率はきわめて低いはずである。タヌキの生息密度は非常に低いためである。マスコミの皆さん、探しても時間のムダです。あきらめましょう。

武蔵野台地の個体群

東京都23区のタヌキは、その大半が武蔵野台地の上に生息している。おおざっぱにはJR東北線の西側、国道246号線の北側となる。
武蔵野台地は、荒川と多摩川にはさまれた台地のことを指す。武蔵野台地の東端がJR東北線にあたる。上野〜赤羽間では線路西側が崖地形になっている。この崖が台地の先端である。皇居(江戸城)も武蔵野台地の先端に位置している。

武蔵野台地の上の個体群のうち、皇居、赤坂御用地、新宿御苑、明治神宮・代々木公園などを含む個体群を「御所グループ」、神田川北岸の目白崖線から上野公園・谷中霊園までの個体群を「目白崖線本郷台上野台グループ」とする。この2グループは都心部に分布しているため特に区別している。
西側はまとめて「武蔵野台地グループ」としている。
武蔵野台地上には広くタヌキが分布しているが、その中でもある程度の生息数が推定される地域をサブグループとした。

御所グループ(再掲)

御所グループは皇居など東京都心部に位置している。皇居、赤坂御用地、新宿御苑、明治神宮など皇室に関係する場所が主要なサブグループになっており、そこから「御所グループ」と命名した。

皇居、赤坂御用地、新宿御苑、明治神宮/代々木公園は東京都心にある巨大な緑地であり、東京都心の動物・植物生態系に大きな影響を持っている。ただし、これらの緑地は都市化された(人工的な建造物に埋め尽くされた)「海」に浮かぶ「島」のように位置している。そのため各サブグループは連続せずとびとびに連なっている。各サブグループ間は離れているが、がんばればタヌキが移動できる距離ではある。日常的な行き来は無理でも、まれに別のサブグループ領域に移動する個体はいるはずである。

東京都心というと世界的な大都市であるが、これらの巨大緑地を正しく評価しなければその自然生態系は理解できないだろう。「東京都心にタヌキなんかいるはずがない」と思ったとしたら、それは東京都心の自然生態系のことがわかっていないのである。

目白崖線本郷台上野台グループ

複雑なグループ名だが、領域内の主な地形名を連ねただけである。単純化すると神田川北岸一帯となる。もっと良い名称がないか考えているところである。

西は妙正寺川北側の中井、東は上野公園までを領域とする。各サブグループ間では離れているものもあり、そのような場所では日常的な行き来は難しい。
南側の御所グループ、北側の武蔵野台地グループとは離れており、行き来はほとんどないと予想される。ただし、後楽園サブグループ〜皇居サブグループは比較的近い。谷中からはJR線路沿いに北の王子方面まで薄く分布している可能性がある。

下落合サブグループは「新宿(区)のタヌキ」として以前から(2005年頃には既に)有名である。

武蔵野台地グループ

御所グループ、目白崖線本郷台上野台グループの西側の武蔵野台地上のサブグループをまとめて武蔵野台地グループとした。
南限は国道246号線。ここより南側ではタヌキの生息は極端に少なくなる(多摩川沿いを除く)。

タヌキは均一に分布しているのではなく、濃淡がある。河川がある場所、緑地が多い場所に生息する傾向がある。

河川敷の個体群

タヌキは大河川の河川敷にも生息している。
河川敷は植物が繁茂していれば身を隠すことができ、ねぐらにも巣にもなりうる。夜間はほぼ無人であるのも都合が良い。
そのため目撃情報も少なくなり、生息の実態がわかりにくい。河川敷近くでの目撃情報があることから河川敷にも生息していることが推測できるのである。

荒川右岸グループ

上流から河口部まではぼ連続して生息している。
河口部では砂町水再生センターや企業敷地、グラウンドなどに広く生息している。
墨田区ではタヌキの目撃がほとんどないが、荒川河川敷に生息しているのは確実である。

荒川左岸グループ

荒川右岸ほどではないが生息している。
葛西臨海公園でもタヌキの目撃例はある。この個体がどこから来たのかははっきりしないが、荒川沿いに来た可能性が高いと推測している。

江戸川右岸グループ

江戸川沿いだけでなく、水元公園も含めている。
生息数は多くはないようだ。河口付近での目撃はない。

多摩川左岸グループ

河口近くまで生息している。
多摩川河川敷は狭いせいか、河川敷から少し離れた場所にも生息している。

孤立した個体群

タヌキの日常の行動範囲は半径数百m以内とされる。そのためサブグループ同士は間隔が少し広くなる箇所はあってもだいたい連続して連なっている。
ところがタヌキがまったく目撃されない広い「空白地帯」の中で唐突にタヌキの生息場所が現れることがある。近隣のサブグループからは離れすぎていて日常的な交流は難しいことから「孤立した個体群」と呼ぶことにした。
孤立はしているが繰り返し目撃が報告されており、繁殖・定住には成功しているようだ。

孤立した個体群の一部は国道246号線の南側地域で見られる。
国道246号線の南側は東海道に近かったためか開発が早くから行なわれ、タヌキの生息には不利な環境になってしまったようだ。それでも一部が生き残りに成功したらしい。

別の孤立した個体群はJR東北線以東の低地帯にある。この低地帯では荒川、江戸川の河川敷が主な生息場所になっているのは既に述べた通りだが、それらとは別の個体群も存在する。

<スポンサー欄>