東京タヌキタイムズ
132号(2019年12月) 東京都23区のタヌキの生息分布 武蔵野台地グループ
生息分布地図
Googleマップが開きます。
注意点(再掲)
・「サブグループ」は継続的にタヌキが定住している地域を表す。
・「グループ」はサブグループを地理的にまとめたものである。血縁関係・家族関係があるという意味ではない。
・グループ、サブグループの名称は原則として地名を採用している。
・サブグループに含まれる生息数は決まっていない。ただし継続的に定住しているということは1つがい以上が生息していることを意味する。
・サブグループの領域外にはタヌキがまったく生息していないという意味ではない。サブグループの領域(境界線)は便宜的なものでしかなく、その外側にも当然タヌキは生息している可能性はある。サブグループの領域外にタヌキを見つけても自慢にはならない。
・サブグループの領域内ではタヌキが均一に分布しているわけではない。
・意図的に地図に載せていない個体群もある。存在が知られることで生息に影響があるのではないかと心配されるからである。逆にあえて公表することで注意を促している場合もある。
・この情報を元にタヌキを探しても発見できる確率はきわめて低いはずである。タヌキの生息密度は非常に低いためである。マスコミの皆さん、探しても時間のムダです。あきらめましょう。
武蔵野台地グループ 概要(再掲)
御所グループ、目白崖線本郷台上野台グループの西側の武蔵野台地上のサブグループをまとめて武蔵野台地グループとした。
南限は国道246号線。ここより南側ではタヌキの生息は極端に少なくなる(多摩川沿いを除く)。
タヌキは均一に分布しているのではなく、濃淡がある。河川がある場所、緑地が多い場所に生息する傾向がある。
王子サブグループ
北東側のサブグループから反時計回りに説明していきます。
王子駅から西の石神井川沿いの地域。公園、学校、陸上自衛隊駐屯地などタヌキの生息を助ける場所が多くある。
エリアには飛鳥山公園も含めているが、ここでの目撃例はまだない。
エリア外の王子駅から東の地域でも目撃例がある。企業敷地に生息していたらしいと推測されるが、最近の目撃はない。
赤羽西サブグループ
JR東北線・埼京線から西側の地域。
線路の東側の地域ではタヌキの目撃事例は1件だけである(しかも荒川河川敷から来たものと推測される)。
緑地は線路西側の地域で多く、東側ではほとんどない、という要因がタヌキの生息を決めていることがはっきりとわかる。
代表的な緑地は赤羽自然観察公園。また、武蔵野台地の北東端にあたり、急激に標高が高くなる崖地形に縁取られている。崖地形では開発が難しいため緑地が残りやすい。
中台志村サブグループ
環七通り、環八通り、中山道、東武東上線に囲まれた地域。
サブグループが道路などで接している場合は、現実的には便宜的な境界にすぎない。
鉄道線路は移動の障壁にはならない。フェンスなどをくぐり抜けることができなくても、踏み切りから出入りができるからである。
大きな道路は移動の障壁にはなるが、深夜ならタヌキでも横断可能になるため絶対の障壁ではない。
タヌキは広く目撃されているが、生息数は少ないようだ。
大谷口サブグループ
大谷口や向原を含む一帯。大きな緑地があるわけでもなく、なぜタヌキが生息しているのか不思議に思える地域だが、昔から目撃情報はある。
日本大学板橋病院があやしそうに見えるが、付近での目撃情報はない。
大谷口、向原での目撃が多い。
城北中央公園サブグループ
城北中央公園を含む一帯。西は環八通りが境界となる。
城北中央公園とその近辺に生息している。以前は城北中央公園から離れた場所でも目撃があったが、最近はない。
江古田サブグループ
武蔵大学(系列校を含む)と江古田の森公園が主な生息域となっている。これらの敷地外でも目撃はよくある。
武蔵大学近辺は昔から目撃情報があり、敷地内に生息していることは当時から予想されていた。(東京タヌキ探検隊!のデータベースで最初に記録されたのは2006年(DBN39)。)
武蔵大学敷地内では次のような報告が公開されている。いずれもPDFが公開されている。
武蔵学園構内におけるホンドタヌキの生息状況(白井、2017)
武蔵学園構内で確認された疥癬タヌキと2017~2018年のタヌキの生息状況(白井、(2018)
武蔵学園に生息するタヌキの外食率を探る(飯島、斎藤、白井、2018)
自由に利用できるフィールド(観察場所)があるというのはうらやましいことである。
※このエリアからは大きく外れるが、平和の森公園についても述べる。
平和の森公園とその近辺では少数だがタヌキが目撃されている。ただし、継続的に個体群が生息しているかどうかはわからず、サブグループとしては扱っていない。
同公園では2017年より大規模な工事が始まっている。もしタヌキがいたとしても工事に驚いて去ってしまったかもしれない。
工事が終わってもタヌキたちが隠れることができる林が残っていないと定住は難しい。
同公園と周辺での目撃情報がどう変化していくのか注目している。
練馬桜台サブグループ
桜台は以前は目撃がたびたびあった地域だが、最近の目撃はない。この20年ほどで農地などの緑地が減少したからかもしれない。
このサブグループにはとしまえん(豊島園)も含まれる。としまえん敷地内にねぐらがあるか、行動範囲に入っているのは間違いなさそうだが、目撃情報が少ないため詳しくはわからない。
サブグループ全体としては生息数が多いわけではないようだが、確実に定住個体群は存在している。
徳丸西台サブグループ
環八通り、首都高速道、新大宮バイパス、東武東上線に囲まれた地域。
目撃は少ないが生息は確実である。
首都高速道を越えた高島平団地一帯での目撃はさらに少なく、定住はしていないと見られる。
練馬駐屯地サブグループ
練馬駐屯地を含む一帯。自衛隊の敷地内での目撃情報はまず来ないが、周辺での目撃があるので敷地内に生息しているのは確実である。
おそらく警備のセンサーにタヌキなどがひっかかったり、監視カメラに映ったりしていることはあるはずだが…。
赤塚成増サブグループ
赤塚、成増など板橋区西端の地域。
赤塚城趾近辺での目撃が多いが、農地など緑地も多いため広く分布していると見られる。
光が丘公園サブグループ
光が丘公園を中心とした地域。
光が丘公園は夜は真っ暗な場所がほとんどであるためタヌキには都合が良いようだ。一方、暗いためになかなか目撃されにくい。
光が丘公園の他にも緑地は多く、うまく隠れて生息している個体もいそうである。
133号(2020年1月) 東京都23区のタヌキの生息分布 武蔵野台地グループ(承前)
石神井公園サブグループ
石神井公園を中心とした地域。
開けた石神井池(ボート池)よりも森に囲まれた三宝寺池周辺の方が目撃が多い。三宝寺池は夜はまっ暗で人もほとんど来ないためタヌキには都合が良い。
また、立入禁止の石神井城趾、人間がまず踏み込めない急斜面などタヌキ向きの場所は多い。
大泉サブグループ
「大泉」の名が地名に付く広大な領域。
タヌキが生息していることには疑いがないが、目撃情報が少ない地域である。そのため、詳細な分布はわからない。
目撃情報数は人口密度に左右されるということが実感される地域である。
鷺宮阿佐ヶ谷高円寺サブグループ
かなり広い面積だが、実質的には鷺宮、阿佐ヶ谷北〜高円寺北、高円寺南の寺院群の3つのエリアに生息はほぼ限定される。
鷺宮は、早稲田通り近くで目撃が多い。
高円寺南には学校があるため、登下校の生徒・児童たちが目撃しているだろうと予想される。
井荻サブグループ
井荻駅から西側の地域。
農地、寺院、学校などを利用してタヌキが生息しているようだ。
エリア外になるが、桃井原っぱ公園は以前は日産自動車荻窪工場だった(2001年まで?)。当時(工場が稼働していた1990年代)、工場付近でタヌキの交通事故死があったとのことで、工場内に生息していたのではないかと推測される。(具体的な目撃情報が得られたわけではないので東京タヌキ探検隊!データベースには記録はない。)
現在は同公園、マンションなどになってしまったためタヌキが生息できる環境は失われてしまった。
善福寺公園サブグループ
善福寺公園を中心とした地域。上の池、下の池どちらの周辺でも目撃されている。
東京女子大学内にも生息しており、大学内ではよく知られているようだ。
井草八幡宮もエリアに含めているが、この付近では目撃情報はほとんどない。
立正佼成会サブグループ
立正佼成会と救世軍ブース記念病院を中心とした地域。宗教団体名をサブグループ名につけるのはどうかと思われそうだが、立正佼成会の敷地あってこその生息なのである。所有地はかなり広いため、場所によってはタヌキの存在が気付かれていないこともあるようだ。
立正佼成会から北へ分布を広げる個体も時々現れるが、蚕糸の森公園まではなかなかたどり着けないようだ。
東方向へも分布は広がっていない。
荻窪善福寺川サブグループ
環七通りと環八通りの間の善福寺川沿いの地域。
タヌキの目撃情報が特に多いサブグループのひとつ。
荻窪(荻窪駅の南側地域)も目撃が多い。
ハクビシンの目撃がなぜか少ない地域でもある。
JR中央線の北側にはタヌキの目撃がない地域が広がっている。不思議なことにこの地域ではハクビシンの目撃も少ない。
武蔵野台地グループではこのような空白地帯があちこちに見られる。生息が少ない理由ははっきりしないが、安定して定住できる緑地があるかどうかが大きな原因になっているように見える。
宮前サブグループ
JR中央線の南側、環八通りの西側の地域。
大きな緑地があるわけでもなく、生息数は少ないようだ。
それでも、繁殖した事例も報告されており、小さな緑地をうまく利用して生息しているようだ。
方南南台笹塚サブグループ
杉並区方南、中野区南台、渋谷区笹塚にまたがる地域。大きな緑地はないが目撃が多い。
実際にはさらに東の幡ケ谷、初台でも目撃はあるが、幡ヶ谷以東では定住はほぼないようで、生息していても数はかなり少ない。
永福浜田山サブグループ
環七通りと環八通りの間の神田川沿いの地域。
かつては企業運動場がいくつもあり、そこがタヌキの生息を助けていたと見られる。現在も残るグラウンドや公園などの他、学校敷地、寺社、屋敷林などを利用して生息しているとみられる。
久我山サブグループ
永福浜田山サブグループから続く神田川沿いの地域。環八通りから三鷹市境界まで。23区外ではあるが井の頭公園一帯も大きなサブグループであり、そことのつながりもあると考えられる。
この領域では玉川上水が開渠であるためその流域にも生息があるようだ。
Googleマップの航空写真からもわかるようにかつてグラウンドだった広大な空き地があり、ここがタヌキ生息地のひとつであるのは確実である(2019年時点)。今後の開発によってはタヌキの生息が難しくなるかもしれない。
京王井の頭線の富士見ヶ丘検車区(車両基地)内にもタヌキが生息していると予想される。どの車両基地でも生息しているというわけではないが、車両基地はタヌキやハクビシンにとっては安全な生活場所になりうる。
134号(2020年2月) 東京都23区のタヌキの生息分布 武蔵野台地グループ(完)
代々木上原サブグループ
山手通り、井ノ頭通り、甲州街道に囲まれた地域。
山手通りは立体交差している小田急線沿いにくぐり抜けられるので、御所グループにつながっていると言える。
駒場サブグループ
東京大学駒場キャンパスとその周辺の地域。
駒場キャンパス内に生息しているようだが、サブグループ全体でも目撃情報は少なく、実態はよくわからない。
ここから南方向へはタヌキの空白地帯になる。
世田谷線サブグループ
世田谷線沿線の広い地域。ただし均等に分布しているわけではない。
世田谷線の線路敷地を利用している個体群がいることは早くから知られていたが、ここでは詳細は述べない。
不思議ではあるが豪徳寺、世田谷八幡宮近辺での目撃は少ない。
エリアの北東端には和田堀給水所がある。
和田堀給水所は宮本隊長が東京都23区で始めて野生のタヌキを目撃した場所である。それは1998年4月のことだった。その時の詳細は「動物の見つけ方、教えます!―都会の自然観察入門」(2004年、数研出版、現在入手困難)に記載してある(同書内では具体的な場所名は記さなかった)。
上水道施設は関係者以外は厳格に立ち入り禁止になっており、施設内は建物内以外はほぼ無人状態である。そのためタヌキの生息に適した場所となっている。1998年当時は少なくともタヌキ1家族以上が定住していた。このタヌキと出会ったことが、宮本隊長が東京タヌキを研究するきっかけとなったのである。
2013年頃から和田堀給水所では大規模な工事が始まった。これは老朽化した設備を新しいものにするためのものである。2019年時点での航空写真を見ると、敷地東半分は工事中になっており、タヌキは生息できない環境になっているようだ。西半分(旧大原会館敷地を含む)はまだ植栽が残っているがタヌキが生息しているかどうかわからない。ただし、西半分も間もなく工事が始まると予想される。
さらに、敷地南端は井の頭通りの直線化のために使われることが決定しており、現存の植栽がほとんど削られるのは確実である。
世田谷区は一部をオープンスペース化することを求めてもいる。
今後、和田堀給水所ではタヌキが生息できる環境の回復はありえないと考えられる。
タヌキが都会で定住するには、ある程度の規模の安定した緑地が必要である。そうしたひとつが失われるのは残念である。
上北沢サブグループ
環八通りの東側、甲州街道の南側の地域。
都立松沢病院の敷地に生息しているのは確実だが実態はわからない。
桜丘サブグループ
環八通りの東側、小田急線の南側の地域。馬事公苑も含まれる。
馬事公苑にもタヌキは生息していたのではないかと思われる。実はタヌキがウマのエサを目当てにやって来る例は他でもあった。
2019年現在、馬事公苑は東京オリンピックのために大規模工事が行われており、敷地内には生息していないと予想される。残念だが工事終了後もタヌキの生息は難しくなるだろう。
砧サブグループ
砧公園とその北側(小田急線まで)の広い範囲を含む領域。
砧公園にタヌキが生息しているのは確実だが、夜はまっ暗なのでまず目撃されない。
北側では祖師ヶ谷大蔵駅近くでの目撃もあり、広く生息しているようである。
給田サブグループ
千川沿い、第一生命グラウンドを中心に周辺に分布している。
成城サブグループ
成城近辺の野川両岸の地域。
目撃が多いのは野川東岸の崖地形の地帯である。崖地形であるため緑地が残り、タヌキの生息を助けている。
野川両岸で目撃はある。