東京タヌキ探検隊タイトル

東京タヌキタイムズ

152号(2022年4月) 都市動物誌 スズメ

突然ですが東京タヌキタイムズを再開します。しかも内容はタヌキではありません。なぜこんなことを書く気になったのかについては次回書くとして、まずはスズメの話から。

都市を代表する動物とは何か、というといろいろな候補が挙がってきそうですが、知名度や観察のしやすさからまずはスズメを推薦したいです。実際スズメは都市的な要素も持っています。

なぜスズメが都市的かを説明するその前に、「巣」と「ねぐら」について説明します。これはスズメに限らず多くの動物にかかわる言葉です。
それぞれの定義は簡単なもので、
「巣」は出産(産卵)し、子育てをする場所
「ねぐら」は眠る場所
のことです。
巣とねぐらを同じようなものと解釈している人がいるかもしれませんが、これらは厳密に別のものです。もちろん、巣とねぐらが常に同一という例もあります。が、鳥の場合は巣とねぐらは別のものとなります(抱卵、子育て中は同じになりますが)。

スズメのねぐらは簡単に見つかります。
夕方、街路樹にスズメがたくさん集まってチュンチュン鳴いているのを見た経験はないでしょうか。その街路樹がスズメのねぐらなのです。駅前や大通りの街路樹がねぐらになることも珍しくはありません。
スズメのねぐらの見つけ方のポイントは、ねぐらに戻るのは日没時刻前後であるということです。これは昼行性の鳥全般に共通することで、曇った日でもかなり正確に戻ってきます。ですのでその日の日没時刻は必ずチェックしておきましょう。日没時刻はネット検索ですぐにわかります。
スズメのねぐらを長期間観察すると、街路樹ではずっと同じ木ではなく、少しずつ隣の木にずれていくことがわかるかもしれません。ねぐらはいつまでも固定しているわけでもないようです。

さて、スズメの巣の見つけ方はもうちょっと難しくなります。
まず、スズメの繁殖期は期間が限られています。東京都23区だと5月〜6月です。この時期は他の多くの鳥も繁殖期ですので(タヌキも繁殖期)、ちょっと警戒レベルを上げておきたいです。
スズメの巣そのものを見つけることはまず不可能です。というのは、見えない場所に巣を作るからです。ですが巣を作る場所は人工的な場所です。例えば、瓦屋根の隙間、軒先の隙間、換気口など。さらには電柱のトランスの下の空間、横に延びた電柱や道路標識の棒の中に巣を作る例もあります。スズメが都市的であるとはこういうことです。スズメは人間生活とは切り離せない動物なのです。
では見えない巣をどうやって見つけるのか。私の場合は鳴き声で探します。いつもではありませんが、巣の中の幼鳥が「チュクチュクチュクチュクチュク…」と鳴き続けることがあり、それで巣があることがわかるのです。それでも場所の特定はできませんが、少し待てば親鳥が帰ってきますのでその時に特定できます。
鳴き声はしなくても、親鳥が頻繁に出入りする様子を発見することで巣の場所がわかることもあります。こちらは偶然頼りになりますが。
私でも、特に探索しているのではなくても毎シーズン1回か2回は発見できるものですので、慣れれば難しくはないでしょう。
スズメの巣の探し方は、次の文献が参考になります。

日本にスズメは何羽いるのか?(三上修、2008)

日本におけるスズメ個体数の減少要因の解明:近年建てられた住宅地におけるスズメの巣の密度の低さ(三上修、三上かつら、松井晋、森本元、上田恵介、 2013 )

上の文献に書かれている通り、最近の住宅ではスズメが巣を作りにくいということが知られており、それもスズメの数の減少の理由とされています。
最近の建物は気密性を高めるためか、隙間がほとんどなくなっています。また、瓦屋根というのも少なくなりました。また、住宅地で建物を観察すると、雨戸の無い家が大半であることがわかります。
とにかく隙間が無い。これではスズメやアブラコウモリが入り込むことはできません。そう、アブラコウモリも、なのです。

スズメの巣を私が気にしているのは、それがアブラコウモリのねぐら・巣と共通するのではないかと考えているからです。
アブラコウモリは別名イエコウモリと呼ばれるように家屋にねぐら・巣があります。アブラコウモリの場合は通年で利用しますのでねぐら・巣は同じものになります(繁殖期は初夏)。アブラコウモリの体のサイズはスズメより少し小さいぐらいですのでスズメの巣と同じ場所を利用しているだろうと推測できます。
アブラコウモリが家屋のどこをねぐらにしているのかは観察例が非常に少なく私も見たことがないのですが、スズメの巣の場所は探索の参考になりそうです。

スズメにとって巣を作ることができないということは、アブラコウモリもねぐらとして使えないということになります。スズメの危機はアブラコウモリの危機でもあるのです。スズメが減少しているように、アブラコウモリも減少しつつあるのではないか危惧されます。

スズメの減少についてはこの文献も紹介しておきます。

日本におけるスズメの個体数減少の実態(三上修、2009)

スズメについてもうひとつ。
バードウオッチングでは大きさの基準となる鳥が何種かあります。だいたい、小さい方からスズメ、ムクドリ、キジバト(ハト)、ハシブトガラスが選ばれています。これらは「ものさし鳥」と呼ばれています。
「シジュウカラはスズメ大の大きさ(スズメぐらいの大きさ)」というように用いられます。種類を判別するには大きさの情報も大事ですので、これら4種の鳥は真っ先に覚えるべき鳥だと言えます。
この基準で言うと、アブラコウモリは「スズメより小さい」となります。アブラコウモリは小さいんですよ! 世界最小の哺乳類ではありませんが、それに近いサイズです。

153号(2022年5月) 都市動物誌 序文

昨年、ちょっと気になって高校の生物について調べました。教科書は入手できませんので本屋で参考書を見てみたのですが。
調べてみると、高校生物では個別の動物のことはほとんど扱わないのですね。タヌキとかアブラコウモリとか…。まあ、そうだろうとは思っていましたが。
生徒の中には高校の生物ではいろいろな動物や植物のことを勉強できるのかなワクワクと思っていたのに実際はそうではなくてがっかりという人もいるかもしれません。まあ、細胞とか人体の仕組みとか遺伝子とかも重要なのはわかりますが、個別の動物植物を扱わずに生態系だとかを学ぼうとするなんてかなり無茶なことだと宮本隊長は思うのです。

宮本隊長の場合、高校では生物は取らなかったし、大学でも生物関係の講義は取らなかったので、身近な動植物のことは学ばずに大人になりました。動物のことにかかわるきっかけになったのは、アスキー社員時代にマルチメディア図鑑シリーズを担当したことなのですが、この話は長いですので省略。別のところで書いてますのでそちらを読んでください。

今思うのは、身近な動物のことも知らずにいるのはとてもまずいことではないか?ということです。
自然を大切に、とか、環境を守ろう、とか唱えられていますが、自然も環境も遠いどこかの山奥や世界の果てや異世界の話ではなく、私たちのすぐ身の回りに存在するということを忘れてはいけません。都市の自然、都市環境こそ私たち都市住人自身に密接している問題です。そして、都市動物、都市植物はその重要な要素なのです。都市動物、都市植物を知らずに自然や環境は語れません。

これから書くのはそうした都市動物のことです。主にタヌキ以外のことになります。
東京タヌキ探検隊!なのにタヌキ以外のことを長々と書くのは「タヌキだけを見ていてもタヌキのことはわからない」からでもあります。タヌキの研究でもハクビシン、アライグマ、アナグマ、キツネと比べることでタヌキ独特の特徴、生態が明らかになります。
例えば、ハクビシンはタヌキよりも夜行性が強い(昼間の活動がより少ない)とか、タヌキはハクビシンより緑地を好む、といったことがわかってきました。比較する相手がいなければこういうことはわかりません。
ここでは比較の対象として、さらに幅広い動物を取り上げます。都市には、そして世界にはいろいろな動物がいること、タヌキやアブラコウモリはその多種多様の中の一員であるという認識は持ってほしいものです。

もうひとつ大切なことを。これから書いていくことは「哲学」です。
そんなバカな、と皆さんはきっと思うでしょう。
ですが、哲学とは「世界観」あるいは「世界をどうとらえるか」を意味するならば、これから書くことはまさに哲学そのものなのです。こんなのは哲学ではない、と否定するのはあなたの世界が狭すぎるということです。
こんなことをわざわざ書くのは、昨年、ある人に生活の8割は政治よ!と言われたからです。その時はあっけにとられてツッコミ損ねたのですが、なんて可愛そうな人生なのだろうと後でつくづく思いました。ちなみにこの発言は総選挙で投票の依頼をされたときのもので、その人は熱心な某政党支持者でした。さすがに政治8割というのは世界が狭すぎますよね…。私でも動物は5割というところで、タヌキにしぼっても2割です。私はタヌキだけ、動物だけを見ているわけではありません。それに仕事もありますしね…。

これから紹介していく動物は東京都23区で見られるものを中心に取り上げます。東京に限らず日本の都市部なら見られる動物は似たようなものと思います。
他の地域では見られない動物があったならば、なぜいないのか、その違いについて考えてみてください。比べることは大事です。

また、図鑑に書かれているようなことは書きません。そんなことはWikipediaとかネットで調べればわかることですので。

さて、まずは鳥から取り上げていくことにしましょう。都市を代表する動物はタヌキではなく鳥類なのですから。

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