東京タヌキ探検隊タイトル

東京タヌキタイムズ

152号(2022年4月) 都市動物誌 スズメ

突然ですが東京タヌキタイムズを再開します。しかも内容はタヌキではありません。なぜこんなことを書く気になったのかについては次回書くとして、まずはスズメの話から。

都市を代表する動物とは何か、というといろいろな候補が挙がってきそうですが、知名度や観察のしやすさからまずはスズメを推薦したいです。実際スズメは都市的な要素も持っています。

なぜスズメが都市的かを説明するその前に、「巣」と「ねぐら」について説明します。これはスズメに限らず多くの動物にかかわる言葉です。
それぞれの定義は簡単なもので、
「巣」は出産(産卵)し、子育てをする場所
「ねぐら」は眠る場所
のことです。
巣とねぐらを同じようなものと解釈している人がいるかもしれませんが、これらは厳密に別のものです。もちろん、巣とねぐらが常に同一という例もあります。が、鳥の場合は巣とねぐらは別のものとなります(抱卵、子育て中は同じになりますが)。

スズメのねぐらは簡単に見つかります。
夕方、街路樹にスズメがたくさん集まってチュンチュン鳴いているのを見た経験はないでしょうか。その街路樹がスズメのねぐらなのです。駅前や大通りの街路樹がねぐらになることも珍しくはありません。
スズメのねぐらの見つけ方のポイントは、ねぐらに戻るのは日没時刻前後であるということです。これは昼行性の鳥全般に共通することで、曇った日でもかなり正確に戻ってきます。ですのでその日の日没時刻は必ずチェックしておきましょう。日没時刻はネット検索ですぐにわかります。
スズメのねぐらを長期間観察すると、街路樹ではずっと同じ木ではなく、少しずつ隣の木にずれていくことがわかるかもしれません。ねぐらはいつまでも固定しているわけでもないようです。

さて、スズメの巣の見つけ方はもうちょっと難しくなります。
まず、スズメの繁殖期は期間が限られています。東京都23区だと5月〜6月です。この時期は他の多くの鳥も繁殖期ですので(タヌキも繁殖期)、ちょっと警戒レベルを上げておきたいです。
スズメの巣そのものを見つけることはまず不可能です。というのは、見えない場所に巣を作るからです。ですが巣を作る場所は人工的な場所です。例えば、瓦屋根の隙間、軒先の隙間、換気口など。さらには電柱のトランスの下の空間、横に延びた電柱や道路標識の棒の中に巣を作る例もあります。スズメが都市的であるとはこういうことです。スズメは人間生活とは切り離せない動物なのです。
では見えない巣をどうやって見つけるのか。私の場合は鳴き声で探します。いつもではありませんが、巣の中の幼鳥が「チュクチュクチュクチュクチュク…」と鳴き続けることがあり、それで巣があることがわかるのです。それでも場所の特定はできませんが、少し待てば親鳥が帰ってきますのでその時に特定できます。
鳴き声はしなくても、親鳥が頻繁に出入りする様子を発見することで巣の場所がわかることもあります。こちらは偶然頼りになりますが。
私でも、特に探索しているのではなくても毎シーズン1回か2回は発見できるものですので、慣れれば難しくはないでしょう。
スズメの巣の探し方は、次の文献が参考になります。

日本にスズメは何羽いるのか?(三上修、2008)

日本におけるスズメ個体数の減少要因の解明:近年建てられた住宅地におけるスズメの巣の密度の低さ(三上修、三上かつら、松井晋、森本元、上田恵介、 2013 )

上の文献に書かれている通り、最近の住宅ではスズメが巣を作りにくいということが知られており、それもスズメの数の減少の理由とされています。
最近の建物は気密性を高めるためか、隙間がほとんどなくなっています。また、瓦屋根というのも少なくなりました。また、住宅地で建物を観察すると、雨戸の無い家が大半であることがわかります。
とにかく隙間が無い。これではスズメやアブラコウモリが入り込むことはできません。そう、アブラコウモリも、なのです。

スズメの巣を私が気にしているのは、それがアブラコウモリのねぐら・巣と共通するのではないかと考えているからです。
アブラコウモリは別名イエコウモリと呼ばれるように家屋にねぐら・巣があります。アブラコウモリの場合は通年で利用しますのでねぐら・巣は同じものになります(繁殖期は初夏)。アブラコウモリの体のサイズはスズメより少し小さいぐらいですのでスズメの巣と同じ場所を利用しているだろうと推測できます。
アブラコウモリが家屋のどこをねぐらにしているのかは観察例が非常に少なく私も見たことがないのですが、スズメの巣の場所は探索の参考になりそうです。

スズメにとって巣を作ることができないということは、アブラコウモリもねぐらとして使えないということになります。スズメの危機はアブラコウモリの危機でもあるのです。スズメが減少しているように、アブラコウモリも減少しつつあるのではないか危惧されます。

スズメの減少についてはこの文献も紹介しておきます。

日本におけるスズメの個体数減少の実態(三上修、2009)

スズメについてもうひとつ。
バードウオッチングでは大きさの基準となる鳥が何種かあります。だいたい、小さい方からスズメ、ムクドリ、キジバト(ハト)、ハシブトガラスが選ばれています。これらは「ものさし鳥」と呼ばれています。
「シジュウカラはスズメ大の大きさ(スズメぐらいの大きさ)」というように用いられます。種類を判別するには大きさの情報も大事ですので、これら4種の鳥は真っ先に覚えるべき鳥だと言えます。
この基準で言うと、アブラコウモリは「スズメより小さい」となります。アブラコウモリは小さいんですよ! 世界最小の哺乳類ではありませんが、それに近いサイズです。

153号(2022年5月) 都市動物誌 序文

昨年、ちょっと気になって高校の生物について調べました。教科書は入手できませんので本屋で参考書を見てみたのですが。
調べてみると、高校生物では個別の動物のことはほとんど扱わないのですね。タヌキとかアブラコウモリとか…。まあ、そうだろうとは思っていましたが。
生徒の中には高校の生物ではいろいろな動物や植物のことを勉強できるのかなワクワクと思っていたのに実際はそうではなくてがっかりという人もいるかもしれません。まあ、細胞とか人体の仕組みとか遺伝子とかも重要なのはわかりますが、個別の動物植物を扱わずに生態系だとかを学ぼうとするなんてかなり無茶なことだと宮本隊長は思うのです。

宮本隊長の場合、高校では生物は取らなかったし、大学でも生物関係の講義は取らなかったので、身近な動植物のことは学ばずに大人になりました。動物のことにかかわるきっかけになったのは、アスキー社員時代にマルチメディア図鑑シリーズを担当したことなのですが、この話は長いですので省略。別のところで書いてますのでそちらを読んでください。

今思うのは、身近な動物のことも知らずにいるのはとてもまずいことではないか?ということです。
自然を大切に、とか、環境を守ろう、とか唱えられていますが、自然も環境も遠いどこかの山奥や世界の果てや異世界の話ではなく、私たちのすぐ身の回りに存在するということを忘れてはいけません。都市の自然、都市環境こそ私たち都市住人自身に密接している問題です。そして、都市動物、都市植物はその重要な要素なのです。都市動物、都市植物を知らずに自然や環境は語れません。

これから書くのはそうした都市動物のことです。主にタヌキ以外のことになります。
東京タヌキ探検隊!なのにタヌキ以外のことを長々と書くのは「タヌキだけを見ていてもタヌキのことはわからない」からでもあります。タヌキの研究でもハクビシン、アライグマ、アナグマ、キツネと比べることでタヌキ独特の特徴、生態が明らかになります。
例えば、ハクビシンはタヌキよりも夜行性が強い(昼間の活動がより少ない)とか、タヌキはハクビシンより緑地を好む、といったことがわかってきました。比較する相手がいなければこういうことはわかりません。
ここでは比較の対象として、さらに幅広い動物を取り上げます。都市には、そして世界にはいろいろな動物がいること、タヌキやアブラコウモリはその多種多様の中の一員であるという認識は持ってほしいものです。

もうひとつ大切なことを。これから書いていくことは「哲学」です。
そんなバカな、と皆さんはきっと思うでしょう。
ですが、哲学とは「世界観」あるいは「世界をどうとらえるか」を意味するならば、これから書くことはまさに哲学そのものなのです。こんなのは哲学ではない、と否定するのはあなたの世界が狭すぎるということです。
こんなことをわざわざ書くのは、昨年、ある人に生活の8割は政治よ!と言われたからです。その時はあっけにとられてツッコミ損ねたのですが、なんて可愛そうな人生なのだろうと後でつくづく思いました。ちなみにこの発言は総選挙で投票の依頼をされたときのもので、その人は熱心な某政党支持者でした。さすがに政治8割というのは世界が狭すぎますよね…。私でも動物は5割というところで、タヌキにしぼっても2割です。私はタヌキだけ、動物だけを見ているわけではありません。それに仕事もありますしね…。

これから紹介していく動物は東京都23区で見られるものを中心に取り上げます。東京に限らず日本の都市部なら見られる動物は似たようなものと思います。
他の地域では見られない動物があったならば、なぜいないのか、その違いについて考えてみてください。比べることは大事です。

また、図鑑に書かれているようなことは書きません。そんなことはWikipediaとかネットで調べればわかることですので。

さて、まずは鳥から取り上げていくことにしましょう。都市を代表する動物はタヌキではなく鳥類なのですから。

154号(2022年6月) 都市動物誌 ドバト、キジバト

ドバト

都市の鳥といえばドバトもそうです。ですがドバトは野鳥と見なされないこともありますし、研究対象としても人気はないようです。確かに、バードウオッチングではドバトは見向きもされませんしね…。

その「ドバト」ですが、厳密に言えばこの名前は通称のようなものです。もともとはカワラバトというのが正しい名前で、それを家禽化したもの、つまり人間が飼育するようになったものをドバトと言います。今私たちが見かけるもののほとんどはドバトが再野生化したものです。
ちなみに、レース鳩もドバトです。ただし、レース用に改良されていますので普通のドバトとは外見に差がある…そうなのですが、私は見分ける自信はありません。レース鳩は脚環をしているので、それで見分けるのがよさそうです。

ドバトが人気がないのは、フン害のせいもあるでしょう。ドバトのねぐらの下の地面がフンだらけで真っ白に、という現場を見たヒトもいるでしょう。私が知っている場所では、鉄道の高架下や駅の建物といったところです。上を見上げると、その時はドバトはいなくても夜はねぐらになっているだろうことがわかります。下の地面(舗装されている)は雨にあたらない場所で、そのために雨で流されることなくフンが積み重なっていくことになります。
フンの跡がいつまでも残っているような状況は衛生的に良いとは言えません。これは対策をとるべきことです。

最も確実な対策は、ドバトがそこに来れないようにすることです。
駅の構内で上を見上げると、梁の上にトゲトゲがびっしりと敷き詰められているのを見たことはないでしょうか。これがドバト対策なのです。ドバトが来てもとまることができません。
あるいは、網、金網で上部空間に入れないようにされていることもあります。これもドバト対策です。このように物理的に来れないようにするのはドバトに限らず確実な動物対策です。
もっとも、神社仏閣の軒下などがトゲトゲだらけになっている姿を見ると、景観を破壊しているよなあ、と思わざるをえません。

動物がある特定の場所に集まる、その原因は「食べ物があるから」ということが多いです。都会だと本来は動物の食べ物は多くありません。ではなぜドバトは集まってくるのか。それはヒトが食べ物を持ってくる、投げ与えることが原因です。
野生動物へのエサやりには賛否ありますが、現代では無条件に推奨されることはなくなっています。野生動物は自力で食べ物を探すことができるはずですから、ヒトが手伝う必要はないはずなのです。

ドバト対策については次のような調査報告があります。

ドバト害防除に関する基礎的研究 昭和54年(1979年)6月、財団法人 山階鳥類研究所

昭和54年ですよ! この問題の解決方法はわかっているのに21世紀の今も続いているというのは信じられないことです。

ところでエサやりの是非はさておいて、鳥のエサの代表がパンであることには警告をしておかなければなりません。パンは動物の食べ物としてはきわめて不適切なものです。なぜなら、パンは動物にとって塩分が多過ぎるからです。
パンに塩が使われていることを意識しているヒトは少ないでしょう。宮本隊長がこのことを知ったのは無塩パンを食べたときでした。この無塩パン、ぜんぜんおいしくありません。非グルメの宮本隊長でさえびっくりするほどの味だったのです。そして、塩が含まれていないにもかかわらず、「そうかあれが塩の味だったのか」と初めて認識をしたのです。同時に塩の偉大さも認識しました。ヒトは塩抜きには生きていけないのだと。
塩は健康的には嫌われていますが、塩に無縁の無塩生活というのも考えられません。

話を戻すと、ヒトの食べ物はだいたいが「塩分多過ぎ」か「砂糖多過ぎ」か「油多過ぎ」です。自然界には存在しないものであり、動物にとっては良くないものと考えるべきです。
ハトにパンを与えているヒトは、その意図に反してハトを不健康にしているのです。エサをあげることは善いことではないのです。

苦情はここまでにして、ドバトは身近な存在ですので観察しやすい野生動物と言えます。観察のヒントを最後に紹介します。
ドバトは基本的につがいで行動しています。観察していると、こいつとこいつがペアだな、というのは簡単にわかるでしょう。オスの方がやや大きいです。オスは羽をふくらませてアピールするのでその時はさらにわかりやすいでしょう。メスの後をオスがくっついて歩いている様子も見られます。
3頭いる時は、1頭が子供かもしれませんし、三角関係なのかもしれません。実際はどうなのでしょう?
ハトが集まる場所で数十分観察を続けていれば、交尾を目撃できる可能性は高いです。野生動物の交尾は普通はなかなか見られるものではありません。
ただし、エサをばらまくヒトが現れると観察の努力もパーになってしまいます。ハトがどっと集まってきて、どれとどれがペアだったのかもわからなくなってしまいます!

ハトは体色(羽毛の模様)に個性があるので、個体識別も可能…のはずです。宮本隊長はそこまで熱心に観察したことはありませんが。個体識別、誰か挑戦してみませんか? そのノウハウ、ぜひ知りたいです。

キジバト

ハトというとドバトですが、時々ドバトではないハトがいることに気づく方もいるでしょう。 ドバトと比べるとやや小型、色もちょっと地味。「デーデー、ポーポー」という鳴き声でドバトとは違うことがわかります。
これがキジバトです。キジバトも住宅地に普通に生息していますが、数が少なく、集団になることもありません。ですが、エサに集まるドバト軍団に混じっていることもあります。
住宅地で見かけると、つがいでいることが多いように見えます。
首に小さな模様があるのが特徴ですが、この模様は若鳥にはありません。

…キジバトについてはこれぐらいですが、ドバトもキジバトも、年中普通に見かけるということは、住宅地の中で巣を作り、繁殖しているということです。巣は簡単には見つかりませんが、どこかにあるということを意識して観察すると発見できるかもしれません。

155号(2022年7月) 都市動物誌 ハシブトガラス、ハシボソガラス、オナガ

ハシブトガラス、ハシボソガラス

カラスについてはいろいろな本やサイトで語られていますので、宮本隊長からは悪者として語られるカラスについて書くことにしましょう。

東京都で普通見られるカラスは、ハシブトガラスとハシボソガラスです。ハシブトガラスの方がやや大きく、くちばしが太い、というか、くちばしの上側が曲がっています。また、「おでこ」があるのも特徴で、ハシボソガラスと見分けるならここを見るべきでしょう。ハシボソガラスのくちばしは直線的です。
都市でヒトとの間で問題になっているのはだいたいハシブトガラスです。

カラスはヒトからは嫌われています。ヒトにとっては害があるから、ということなのですが、では実際にはどのような害があるのでしょうか。
よく報道で取り上げられるのは、ヒトを襲うというものです。また、生ゴミを荒らすということもあります。他には? まさか、「カァー」と鳴くのが恐怖、なんてヒトはいませんよね? 鳴いただけで害悪というのは言いすぎです。
カラスの害は言われている割にはかなり、かなり限定的なものです。

ヒトを襲うことについて考えてみましょう。
カラスがヒトを攻撃するということは、体のサイズの比で言えば、ヒトがゾウやキリンを(素手で)攻撃するようなものです。これはこわい! ゾウやキリンが怒って反撃すれば死んでしまうかもしれません。重傷覚悟。つまり、カラスにとってもヒトを攻撃するのは命がけのことなのです。
なぜそうまでして攻撃するのか? カラスにはそうせざるをえない理由があるのです。それは、巣の幼鳥(ヒナ)を守るためです。カラスが攻撃してくる状況をよく観察すると、巣にまだ飛べない幼鳥(あるいは卵)がいることがわかります。巣にヒトが近づきすぎる場合、カラスは防衛行動を起こすのです。ヒトが巣を襲撃することがまずないことはカラスもわかっているでしょう。ですが、まれに巣を取り去ろうとするヒトはいますし、ヒトが近くにいるだけでカラスも不安になるのです。
カラスはヒトを襲う、と言いますが、これ以外の状況で襲うことはまずありません。注意すれば回避可能なことです。

先日、仕事関係の人からカラスの相談がありました。建物屋上で点検作業をしていると、カラスが攻撃してくるというのです。隣の敷地が高木のある林で、すぐ近くにカラスが巣を作っているのでした。これは運が悪い…。駆除はしたくありませんし、しようとしても場所が高すぎて巣を除去することも難しそうです。
私が提案したのは、傘をさして作業する、という方法です。カラスは攻撃するときはヒトの後方から飛来し、後頭部を蹴飛ばします。さすがに正面から攻撃する度胸があるカラスはいません。ですので、傘は後ろに傾けてさします。これで攻撃は防げます。カーカー大騒ぎするだろうことは我慢してください。ヘルメットだと首筋を狙われますので万全ではありません。
今回のような作業中だとダメですが、「両手を真上に上げる」という対策方法もあります。カラスは急上昇はできないので、ヒトが手を上げているとぶつからないように攻撃することができなくなりますし、上げた手がカラスをつかもうとするかもしれない…と考えるとカラスも多少はビビるのでしょう。

根本的には巣に近づかないようにするのが最も良い対策です。ある程度広さがある場所ならヒトが立ち入れないよう仕切ってしまうのが良い方法です。カラスが攻撃してくる範囲も無制限ではありません。巣の高さやカラスの性格、ヒトの多さなどにも左右されますが、10mもあれば大丈夫ではないでしょうか。これは現場の様子を見ながら安全圏を設定しなければなりません。

カラスが幼鳥を守るために攻撃すると言ってもそのような現場に遭遇した経験があるヒトはとても少ないはずです。それはつまり、カラスの巣のほとんどは人間の目が届かない安全な場所にあるからです。その場合は攻撃行動は必要ありません。すべての親カラスがヒトを攻撃するのではないのです。
そもそも、カラスがヒトを襲って殺すようなことはありえません。そんな話聞いたことありますか? 蹴飛ばされて出血する事例も少ないはずです。何針か縫うケガをした事例があることは知っていますが、それは駆除業者が巣を撤去しようとした時など特殊な状況です。(駆除業者はこういうことを大げさに語りますので注意してください。)
こう考えると、ヒトに害があるとしてもカラスは不当におおげさに悪者扱いされているのではないでしょうか? ヒトがうまく知恵をしぼれば回避できることでは?

東京都では、2001年からカラスを大型トラップ(ワナ)で捕獲し、殺処分する事業を続けています。カラスはヒトを殺すわけでもないのに、すべてのカラスが迷惑行為をしているわけではないのに、無差別に捕獲され、殺されているのです。そこまでする必要はないだろう、というのが宮本隊長の当初からの意見です。
このカラス駆除事業、都知事が何度交代しても止める気配はありません。都全体から見ればちっぽけな仕事ですので、エラいヒトにはどうでもいいことなのでしょう。それに「ちゃんとやってる感」を出せるので都合のいい事業だとも言えます。

東京都のカラス駆除事業で最もまずいのは、駆除方法とその効果が検証されていないことです。生息数が減ったんだから効果は出ているって? いや、駆除だけが貢献しているのですか? ゴミ出し方法の改善とかその他の要因は関係ないと言えるのでしょうか? 他の対策は試みたのでしょうか? 対策と効果の関係が検証されないままずるずると駆除が続けられてしまったため、駆除方法の変更や事業の終了がいつまでもできないという悪い状態が続き、これからも続いていくでしょう。
カラスを殺すだけで満足している、こんなことをいつまで続けるのでしょう。

なお、東京都のカラス駆除事業は当初は1億円以上を費やしています。都は金持ちですからこれくらい痛くもかゆくもないようです。今はどれくらいの予算なのでしょう?

最後にカラスについての文献をひとつ紹介します。

自治体担当者のためのカラス対策マニュアル 環境省自然環境局、2001年

対策マニュアルではありますが、カラスについての読み物としても面白いです。20年以上前のものですが、今読んでも十分通用する内容です。
これ、東京都のカラス駆除事業開始よりも前に書かれたものです。

オナガ

カラスを取り上げたならオナガも取り上げねばなりません。
オナガは名前の通り尾が長めの鳥です。無茶苦茶長いというわけではありません。
色は黒、白、青で、見た目さわやかな感じなのですが…実はオナガはカラスの仲間(カラス科)なのです。カラス=真っ黒、というのはあなたの思い込みでしかありません。
その見た目さわやかさんなのですが、鳴き声はと言うと…「グェー」「ギョエー」とか「ギャー」といった感じで、ある意味やっぱりカラスだなあ、と思わざるをえません。
もし「ホーホケキョ」と鳴けば、大人気間違いなしなんですがね。もちろん、宮本隊長は鳴き声で好き嫌いを決めたりはしませんよ。

オナガは集団で行動します。この集団は1家族だそうです。私が見たところではだいたい10頭程度(もちろん上下幅あり)の団体かな、というところです。その団体がまとまって飛んでくるのではなく、少しばらばらに、しかし集団を維持しながら移動してきます。団体が来ればあの鳴き声ですから屋内からでもわかります。

オナガは西日本には生息していません。そう言えば宮本隊長(福岡出身)も記憶にないなぁ。東京や横浜ではいつでも見られるわけではないものの普通に生息している鳥です。
やはりカラス科のカササギは九州北部でだけしか見られません。
身近な鳥でもどこでもいるわけではないのだなあとあらためて思った次第です。

156号(2022年8月) 都市動物誌 ムクドリ、ヒヨドリ

ムクドリ

ムクドリは「キュロ、キュロ」とよく鳴くので、目を向けなくても存在はすぐにわかります。鳥の観察では鳴き声での判別も重要なことです。
ムクドリはくちばしと脚がオレンジ色っぽい黄色でわかりやすいです。
芝生や背の低い草地を歩いている姿をよく見かけます。たいてい集団ですが単独の時もあります。
ムクドリは細いくちばしも特徴です。細いくちばしは昆虫食であることを意味しています。芝生では地面をつついていますが、あれは昆虫あるいはその他の無脊椎動物(クモとかか?)を食べているのです。
と言っても昆虫食専門というわけではなく、秋には柿の実を食べに集まってくることもあります。地面でも草の種子を食べることがあるのかもしれません。実際には動物も植物も食べる雑食ということになります。

ムクドリはにぎやかで、見ていて楽しい鳥だな、と思います。

が、ムクドリは都市害鳥でもあります。ハト、カラス、と来て、3つ目の都市害鳥です。
ムクドリの害は、駅前など繁華街に集団ねぐらを作ることです。
集団ねぐらは街路樹に作られますが、街路樹だけでは収容できない場合は電線にずらりと並ぶこともあります。
(繁華街でなくても、公園や工場に集団ねぐらをつくることがあります。こういう場合は影響が少ないということで見過ごされている、見逃されていることも多いようです。)
集団ねぐらの問題は、鳴き声とフンです。ねぐらですのでムクドリが集まってくるのは日没時刻ごろです。集団の規模は数百、数千などさまざまですが、いっせいにキュロキュロ鳴き立てますから近くで聞くとかなりのうるささです。しかも何がきっかけになるのか、夜中でもいっせいに鳴くことがあります。
フンは説明するまでもありませんが、ねぐらの真下はフンで真っ白になってしまいます。

このムクドリの集団ねぐらは決定的な解決法がいまだにありません。
街路樹の枝を切ったり、忌避剤を使ったり、照明を使ったり、音を使ったり、タカで追い払ったりなどなど各地でいろいろな方法が試されていますが、効果は一時的だったり、ねぐらの場所がちょっと移動するぐらいだったりで全面解決とはいかないようです。
予算や人員の都合で、あらゆる対策を試すわけにもいかないでしょうし、繁華街では音やにおいを使う方法はとりづらいものです。

極端な対策としては、街路樹を切り倒すという方法があります。ただ、これを実行すると住民から抗議が来そうです。それに、切り倒しても電線に群がるようになるだけだったら失った価値の方が大きすぎます。
街路樹を切り倒す、さらに電線を地中化する!とやってもいいのですが、今度は建物の屋上に群がることになってしまうかもしれません。あるいは隣の駅に移動するだけのことかもしれません。

これだけ各地で長年問題になっているのに未だに決定的な解決方法がないのは不思議です。各地での事例(対策と結果)を誰かがまとめてくれないでしょうか。そこから有意義な情報が見えてくるかもしれません。…逆に答えがないことが見えてくるかもしれませんが…。

ヒヨドリ

ヒヨドリはムクドリよりちょっと大きい鳥です。
ムクドリを比較に出したのは、どちらも秋になると柿の実に集まってくるからです。でも見分けるのは簡単です。ムクドリは先に紹介したように、くちばしと足が黄色です。ヒヨドリは灰褐色。目のすぐ後ろがやや褐色です。
鳴き声は「ヒーー」あるいは「ヒーヨ」で、これが名前の由来と言われています。
飛び方も特徴があります。羽ばたく→羽ばたき止める→羽ばたく、を繰り返します。羽ばたきを止める間は高度が落ちるので、波のように上下に飛んでいくことになります。
これらの特徴を知っていれば簡単に見分けることができます。ムクドリとともに初心者にもわかりやすい鳥と言えます。

ヒヨドリは、東京都23区では1年中見ることができる鳥ですが、秋冬に比べると夏は見かける頻度が少ないように思えます。実はヒヨドリは季節移動をする渡り鳥なのです。渡り鳥といっても外国まで行くのではなく、日本国内を移動しています。海峡を越えるヒヨドリの群れもあります。津軽海峡や関門海峡が有名なようですね。
東京都23区のヒヨドリも、ずっと留まる留鳥もいるのでしょうが、季節移動をする個体も多く、そのため夏に少ない印象を与えているのでしょう。
ヒヨドリのくちばしは細いのですが、ムクドリ同様に雑食で、果実や花の蜜を好みます。果実を食べるということは農業害鳥でもあるということです。
ヒヨドリはもちろん昆虫なども食べますが、ムクドリとは違って地上にいることはほとんどありません。いつも樹上にいる鳥です。

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